第二十一話「転生者達の共闘」

「おのれ――ただのモブ令嬢ごときがっ!」

ステイミーが叫んだ。見ると、彼女は禍々しいオーラを纏っている。

「えっこれやばくない?」

「絶対やばいわよ!」

「彼女、たぶん闇に呑まれてるんだ」

私とエリナが動揺する中、アツミが落ち着いた様子で言った。

「私とユイカちゃんで動きを止めよう。そしたらエリナちゃん、あなたの聖なる力で浄化して」

「了解!」

「任せてちょうだい」

私達はそれぞれ動き出す。

「とりあえずここだと危険だから広い場所へ!テレポート!」

私が叫ぶと、私達四人は中庭へ瞬間移動した。

「次は私、ライジングゲージ!」

その瞬間、ステイミーが檻へ閉じ込められる。

「ふんっ、こんなもの壊して――きゃあぁっ!」

檻に触れた彼女は悲鳴を上げた。

「雷の檻。触ると感電するのよ」

アツミが解説してくれる。私はエリナに向かって叫んだ。

「エリナお願い!」

頷いた彼女は胸の前で手を組み、目を閉じる。

「聖なる神の力よ、穢れを取り払い、清き心へ戻したまえ!」

その瞬間、天から白い光が降り注いだ。それはアツミが作った檻を貫通しステイミーを包み込む。

やがて光が消えてなくなると、そこには彼女が倒れていた。

「エリナ、彼女大丈夫なの?」

「問題ないわ。眠っているだけよ」

「そっか」

「とりあえず彼女を保健室に運ぼうよ」

アツミの言葉に私とエリナは頷いた。


ステイミーが目覚めるのを待っている間、私はアツミに自身の素性を話した。

「驚いた。私の住んでいた世界の外にもう一つ世界があったんだね」

「そうなの。ややこしくてごめんね」

「良いよ全然。ユイカちゃんが謝ることでもないし」

「それはまぁ、確かに」

「……あの」

突如、これまでずっと黙っていたエリナが口を開いた。

「どうしたの?」

「アタシ、アンタに謝んなきゃ。いろいろ濡れ衣着せて悪かったわね」

「いいよ。エリナちゃんさえ良ければこれから仲良くしようね」

「ありがとう、アツミ」

二人は親しげに握手を交わす。一件落着だと安堵しつつも思うことがあったので、アツミに聞いてみた。

「アツミ、一つ聞いても良いかな?」

「何かな?ユイカちゃん」

「どうしてエリナの誘いを断わったの?」

「あぁそれね。私は構わないと思ったんだけどリルカが断わっちゃって」

「なるほど……」

やはりエリナとリルカの間に存在する溝は深いようだ。

「うーん……?」

不意にベッドの方から声がした。ステイミーが目覚めたらしい。

「私見てくるね」

カーテンを開けると、彼女は既に起き上がっていた。

「気分はどうかな?」

「カルロ様、私……」

「犯した罪は消えない。でも、これから変わっていけば良いのよ」

「そうそう。私達も力になるから」

振り向くとエリナとアツミが並んで立っていた。

「ティーナさん、リリア様、そしてカルロ様……ごめんなさい」

「大丈夫だよ」

私は彼女の手を取る。

「これからも友人としてよろしくね」

「はいっ!」

彼女に聞きたいことは山程ある。特に「あの方」の存在について。

けれども今は休ませてあげよう。おぞましい闇の力に支配されて疲れただろうから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る