第21話『計画を邪魔する者 3』

 結局部屋で過ごしたり家族と出掛けたりして時間は過ぎ土日が終わって月曜日、登校中に背後から声を掛けられて振り向く。


「おはようございます」

「おはよう、咲ちゃん」


 土曜日の誘いを断り母親と三鈴と共に出掛ける事を薦めた手前困ったことが無かったか当日の夜にメッセージで聞いてみたら、何も問題は無かったと返信が来た。それが強がりでは無かった事が、咲ちゃんの表情から読み取れて安堵する。


「咲ちゃんはさ」

「はい?」

「咲ちゃんは、まだ三鈴の事許してないんだな」

「はい、もちろんです。お姉ちゃんのした事は最低ですから」

「オレがもう怒ってなくても?」

「変わりません。それに、私と徹先輩じゃ怒っている事が違いますから」

「怒っている事が、違う?」

「ええ、大きく」


 その後、その違いを咲ちゃんは教えてくれる事無く学校に着き、それぞれの教室へと向かった。


              *


 先週と変わらず立花と昼休みを過ごし5分後に午後の授業が始まろうとしているタイミングでオレのスマホが震えた。相手は三鈴の友達でオレとも面識がある知恵ともえだった。以前一応連絡先を交換して以降一度もメッセージを送り合った事が無く、だから連絡先を消すことも相手からのメッセージをブロックする事も忘れていた。

 

『立花彩華さんと付き合ってるって、本当?』


 とうとう噂がクラス内を出て知恵のところまで届いたらしい。しかし、わざわざ知恵がオレにその真偽を確認する理由があるだろうか……あるとすれば、それは確実に三鈴関係。だけどそれは通常0に等しい確率で無いはずだ。

 オレと三鈴の関係は、オレから別れを切り出したとは言え原因は三鈴にある。だから、『立花と付き合いたいから別れた』なんて疑いを掛けられるはずがないし、『三鈴の気持ちを考えて』なんて言われる筋合いはない。

 オレは返信をする事なく知恵からのメッセージをブロックし、スマホをポケットにしまった。

 

「なあ立花」

「なに?」

「今週の土曜日暇か?」

「……それは嫌味?」

「友達が少ないのはオレも同じなんだからそんな嫌味言う訳ないだろ。いや、もしよかったら前のお返しで約束してたろ。オレの家に招待するって、もてなすって」

「ああ、そういえば」

「立花がよければ土曜日、どうだ?」

「睡眠薬とか媚薬とか盛らないって約束出来るなら?」

「お前はオレを何だと思ってるんだ」

「男子が自分の家に付き合ってもない女子を招待する────それって、女子からすると警戒の対象でしかないの、分かる?」

「そりゃ分かるけど」

「でも、良いよ。じゃあ、土曜日招かれてあげる」


 今の話の流れで了承されると、そういう風に捉えそうになるが、単にオレの事を信頼してくれていると捉える事にする。


「なら丁度いいから、その土曜日、大切な話をしてあげる」

「大切な話?」

「そう、津山さんの事とか、ね」


 詳しく聞こうとしたタイミングでチャイムが鳴り、教室に担当教師が入ってくる。仕方なく話を中断したが、その後土曜日当日まで詳細を教えてくれる事は無かった。

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