第12話 ファーナのいら立ち、原因は何?
ファーナは自分の感情を理解できなくてイライラとしている。
野営地の内側でアルベルト達が歩いていった方角を見ている。
アルはちょっとイメルダの胸が大きいからってでれでれして、だらしがない。
他の世俗の騎士達と変わらないじゃないとか思う。
エルザが年下で可愛いからって親しくするのも嫌。
そもそもイメルダやエルザより私の方が可愛いのに。
そんな考えを持て余す自分が嫌。
嫌な女だと思う。
こんな嫌な女の子、アルベルトは好きになってくれない。
どうして私はそう考えるの?
まるでアルベルトに好きになってもらいたいみたいじゃない。
確かに神殿でちやほやされてきた私だけど、アルベルトは普通に接してくれた。
多分何もしらないから。
戦争に行く騎士達を祝福して、死しても、死者の楽園であるエリュシオン騎士達に行ける様に願う。
だけど、アルベルトは違う。普通に接してくれて、場合によっては、死の祝福をして騎士アルベルトをエリュシオンに導くかもしれないのに。
そんな私を普通の女の子として扱ってくれる。
でもそれは私だけに、どうか私だけにして欲しい。
これが恋?
私は恋をしたことが無いから分からない。
日が暮れていく。
たいまつの魔法の炎がまだ見えない。
「ファーナ様、何かいらいらしているのですだ」
「イライラ何てしていないわよ」
「口調がきついですだ。お腹が空いたのですだ?」
「そうでも無いわよ。それにしても帰りが遅いわね」
「まだ余裕があるですだ。それにファーナ様のたいまつの魔法は効果時間が長いはずですだ」
「長いわよ。私の松明の魔法でアルベルトがイメルダたちにデレデレしているのを見るのは嫌だわ」
「もしかして、旦那様に恋しているですだ?」
「そんな事は無いわよ」
「早口で否定するのは怪しいですだ。恋は人を盲目にするですだ。旦那様も出世の機会を得られそうですだ。神殿騎士は恰好良さそうですだ」
「だから違うわよ。イメルダの胸を見つめる様な礼節をわきまえない野蛮な騎士は神殿騎士にはなれないわよ」
「それは旦那様が同性愛者で無いと感動している所ですだ。浮いた話が無くて困っていたのですだ。女性に興味が無いのかもと真剣に悩んでいたのですだ。エルザ様やイメルダ様にお嫁さんに来てもらうのも良いかもしれないですだ」
「どうやら私はいらいらしているようね。グリム、イライラ解消のために死んでくれない?」
「申し訳ありませんだ。軽口ですだ。許して欲しいですだ」
グリムは脳を高速回転させて話題を変えようとする。
人の恋路を邪魔して死ぬのは間抜けすぎると言うものだと思い、野営地の外を見る。
そこには野営地に近づいてくる松明の炎があった。
「炎が見えますだ。あれはアルベルト様達に間違いないですだ」
「遅いわよ。それに今の話、アルベルト達にしたら焼き殺すわよ」
「クネヒトは口が堅いですだ。信頼してください」
「信用するわ、もしも今までの会話を他の人に話したら焼き殺すからね」
グリムはそれを無視するように大きな声でアルベルトに呼びかける。
「アルベルト様、ファーナ様がお待ちですだ。早く帰ってくるですだ!」
「グリム、もう直ぐ着く。大量に野菜が取れだぞ」
またアルベルトと会話ができる。それがうれしくてほっとしているファーナがいる。
胸元のペンダントを二つ、触っているファーナだった。自分を落ち着かせるために。
続く
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