View それぞれの一日

第2話 間に合わない人

 彼女は走った。

 全力疾走で走る。

 髪は乱れ、額に汗をかき、胸が苦しくなる程に息も乱れ、脚の筋が千切れるんじゃないかとも思えたが、今の彼女には、それを気にする余裕は無かった。

 周りの目も気にする事なく、唯ひたすらに走り続ける彼女。

 次の電車に間に合えば、約束の時間にも間に合うと、唯その思いだけで必死に走る。

 息を切らしながら、交差点の横断歩道の信号が、赤から青に変わるのを足踏みして待つ。

 この交差点を渡れば、駅の改札口が直ぐそこに在る。

 改札口をすんなり通過する為に、カバンから電子カードを取り出してスタンバイする。

 後は、この信号が青になれば、数十mを走り抜き、電子カードを改札口にタッチして、階段を駆け上がれば、電車が到着する迄の数分を利用し、息を整えようとシュミレートしていた。

 3・2・1…さあ青になれ!

 何時でもスタートダッシュ出来る様に、常に足を動かしていた女性。

 信号が変わるタイミングを測り、心の中で、カウントダウンしていた。

 何時もの慣れた場所だったから、タイミングバッチリで、信号が青に変わる。

 予想通りに信号が変わり、周りを見ずに駆け出す彼女。

 目に映るのは、駅の改札口。

 何とか間に合ったと安堵した時

 パパアアアーーーーッ!!

 車のクラクションが、右側から大きく聞こえて来た。

 聞こえた方を横目で見た時、目の前に飛び込んで来たのは、止まらない1台の車だった。

「えっ…」

 其のまま走り続けていたなら、未だ良かったのかも知れない…。

 だが突然の事で、思わず立ち止まってしまう彼女。

「キャアァーーーーッ!!」

「ゥワアァーーーーッ!!」

 彼女が最後に聞こえたのは、周りの人達の叫び声…。

 彼女が最後に見たのは、スローモーションで見える、ブレる駅の改札口から青い空。

 ゆっくりと流れる様に、駅の改札口と、道行く知らない人達の驚く姿。

 建物や色んな看板が斜めに流れていき、建物の形が途切れ、次に続いて見えた青空に白い雲。

 電線には、2・3羽のカラスが休んでいる。

 近くなった空が、ゆっくりと遠ざかっていき、ほんの少しの飛翔をした後、鈍い音と共に、全身に味わった事のない痛みが、重く鈍く伝わってきた…。

 目を開けているのに、何も見えない…。

 騒音と、ジージーザーザーと、ノイズの様な耳鳴りが聞こえたと思ったら、音も聴こえなくなって来ていた…。

 自分の周りで、誰かが何かを言っているのは、何となくだが分かる気がしていたのに、今は全く聴こえない…。

 あれ程の重く鈍い痛みが、今は全く感じられなくなっていた。

 何を考えていたのかも、今は分からなくなって来て、考えるのを止めた彼女…。

 そして彼女は、深く暗い闇の中へと溶け込んでいくのだった…。

 暗い暗い闇の中、唯1人、ポツンと漂う彼女がいた。

 ゆっくりと目を開き、何も考えずに周りを見渡す。

 見回したところでこの暗闇の中、何かが見えるはずもなく、唯暗いとだけしか分からない…。

(………私、目を開けてるわよね……。あれ…もしかして目を閉じてる?……うぅん、違う…ちゃんと目を開けてるわ…。どうしたのかしら、暗くて何も見えないわ…夜なのかしら……)

 自分の置かれている状況が、全く分からないまま、彼女は唯、周りを見るだけしか出来なかった。

 夜にしては、闇が強過ぎる。

 全く光を感じない…。

 光を感じないどころか、音や匂いも感じない…。

 何かがおかしい…。

 そう思い始めた彼女は、とんでもない状況の下に居るのだと思い、段々と胸の奥底から、締め付けられる様な恐怖を感じるのだった。

 焦る彼女。

 少しでも良い、自分の置かれた状況を把握しなければと、必死に闇の中を見る。

 どれだけ見てもやはり、暗闇の中に居るのだとだけしか、理解出来ない。

(何で…何で私、こんな暗闇の中に居るの…?どうしちゃったの…私…)

 自分の身に、何が起きたのか、どうして暗闇の中に居るのか、さっぱり分からない彼女。

 全く頭が働かない…。

 考えようとしても、何を考えているのか、考えていたのか、消えかけては思い出すを繰り返して、考えが纏まらない…。

 考えが纏まらないながらも、真っ暗闇でもここに居ては、何の進展もしないと、何も見えない闇の中を手探りをしながら、取り敢えずこの場を離れる事にした。

 移動しようと、自分の直ぐ周りを手探りで、這って移動しようと思い、その場にしゃがもうとする。

 だが何故か、しゃがむ事が出来ないでいる。

 それどころか、手を広げる事や、歩こうと足を前に出そうとしても、全く動く事が出来ない。

 その時になって、ようやくいくつかの事が分かった。

 一つは、闇以外何も見えない事。

 一つは、体が動かない事。

 一つは、上下左右、どちらが地上で、どちらが空なのか、前後も分からない事。

 この最後の一つなのだが、何故上下左右、前後が分からないのかと言うと、自分が地上に立っているのかさへも、分からなかったからだ。

 普通なら重力を感じ、足に大地を感じる筈なのに、それが一切感じる事なく、更に言えば自分の体勢が、ベッドで横になる体勢だったからだ。

 そんな体勢では、立つ事は難しいと、彼女は思った。

 しかも何故か分からないが、感覚的に宙を漂っている感じがしていた。

 水に浮かんでいるならば、服が濡れた感触がする筈なのだが、服が濡れてる感じはしない…。

 それに、暗闇の所為かもしれないが、不規則にグルグルと、回転している様に感じていたからだった。

 漂っていると感じた最大の理由は、なんとなくだが、自ら動けない筈なのに、何も見えないこの暗闇の中を、何かの流れに沿って、浮いたり沈んだりしている様にも感じていたからだ…。

 絶対そうだとは言い切れないが、取り敢えずはそうだと思っていた方が、今は良いと思う彼女。

 一筋の光も無い暗闇のこの場所は、目を開けても閉じていても何も見えず、1番間近に在る自分の体なのに、それさへ見えない。

 暗闇の中に唯1人、動けないままで居たなら、恐怖で気が狂うだろうと思ってしまってから、恐怖に抗う為の何かが彼女には必要だった。

 だからこそ今の自分には、異質とも言えるこの黒が支配している暗闇の空間について、手探りでもいいから、空間の有り様を解き明かす事を考えていれば、少しでも長く、暗闇の恐怖を感じないで居られると考えたのだ。

 そう考えた時、何故自分が、こんな異質な暗闇の空間に居るのか、どうやって来たのかなど、色々と疑問が湧いてくる…。

 先ずは、この暗闇の空間に居る事を理解する以前の事を、思い出さなければいけない…。

 その為にも彼女は、必死に今日の出来事を思い出そうとする。

「今日は確か…あっ今日ではないわね、昨日からだわ…。どうしても今日の午後迄に、仕上げなきゃいけない仕事をしてたんだっけ…。寝る間を惜しんで徹夜で作業して、碌にご飯も食べずにしてて…それから…あっそうだったわ!壁掛け時計を見たら、卓上の時計と違ってて、時計が止まってる事に気がついて…そうそう、慌てて家を出たんだっけ…。本当、なんなのよあの時計!止まるなら止まる、壊れるなら壊れるって言ってよね!おかげでパニックになるし、シャワーも浴びずだし、メイクもまともに出来ないし、ご飯も食べられなかったし、何よりも、約束の時間に間に合わなくなりそうだっし、汗だくになりながら、全速力で走り続けなきゃいけなくなったのよ!もぅ本当最悪よ!家から駅まで、どれ位の距離があると思ってるのよ!息は切れるし、必死な顔で走る姿を他人に晒して、今思えば、メチャクチャ恥ずかしくて!」

 そこ迄言った時、自分の言葉に違和感を覚えた彼女。

「えっ…死に…そう…?」

 “死”の言葉が引っ掛かり、段々と、血の気が引くのが分かった彼女…。

「えっちょっと待って…死?死ぬ?えっ?…いやいや違う違う!思い出して…よく思い出さなきゃダメよ私!」

 闇の中で見えないが、多分彼女の顔は、青褪めていただろう…。

 “死”と言うキーワードに、震えが止まらない彼女。

 震えが止まらないのに、段々とその先の出来事を思い出していく…。

「私…約束の時間に間に合えと…必死に走って…それで、後少しって所で信号に引っ掛かって…後少し…後少しって思って…信号が変わって走り出した……嫌っ!嫌いやっ!思い出したくない…この先、思い出したくないわよ!!思い出したくなんか無いわよ!!!嫌いやいやーーー!!!」

 嫌だと叫びながらも、完全に思い出した彼女…。

 自分の叫び声など何処にも届く訳がないのに、震えながら大きく泣き叫ぶ…。

「嫌ーーー!!!嘘っ!そんなの嘘よーーー!!!認めない…絶対認めないわ…。私が車に撥ねられて、死ぬだなんて…絶対認めないから…。嫌よ…そんなの嫌…。約束の時間…間に合わないじゃない…。やっと…やっと会えるのに…会えた筈なのに…ううっ…ううぅ…あぁぁ…嘘、嘘よね?誰か…嘘だと…嘘だと言って…お願い…お願いだから……」

 自分の現状を思い出し、泣きながら、誰かに嘘だと言ってもらいたかった…。

 だが、その願いは、叶えられる事はなかった…。

 虚しく、何も無い暗闇の中、彼女の咽び泣く声など、どれだけ大きく叫んでも、雑音にすらならなかった…。

 全てを飲み込むこの暗闇、段々と体の感覚さへも、飲み込んでいく…。

(……私、死んじゃったんだ…。それじゃ此処って…あの世って場所なのかしら…。話に出てくる三途の川とか…石を積み上げる子供達とか…居るのかな…。でもこんな暗闇じゃ、何にも見えないわ…。ここ…本当にあの世なの?……もし此処があの世だったなら、こんな感じなのね…。ふふっ…死んでから知っても意味ないわよね…)

 自分は死んだのだと思った彼女は、いつしか泣く事もなく、軽く笑えるわと思ったりもしたが、体の感覚が飲み込まれた様に、次第に意識も飲み込まれ様としていた…。

 生命力そのものが、闇の中に黒く染まっていく…。

 何も見えない暗闇の中で、唯一、彼女だけが、黒以外の色を放っていたのに、その色も、もう直ぐ黒くなるのだろう…。

 そんな時

「会いたかった…。せめて一目、遠くからでも良いから、あの人の姿だけでも…見た…かった…わ…」

 薄れゆく意思…。

 彼女が会いたかった人とは、一体どんな人物なのだろうか?

「ってそうじゃないでしょ!何勝手に死んだとか、此処があの世だとか思ってるのよ私!何の為に、徹夜して仕事してたのよ!全てあの人に会う為にしてたのに、完全に無駄になっちゃったじゃない!どこの誰よ!私を撥ねた馬鹿は!絶対見つけ出して、責任取らせないと、気がすまないわ!その為にも此処がどこなのか、どうなってるのか、どうしたら良いのか、しっかり探らなきゃね…。でも先ずは…」

 かなり気の強い女性だったらしい…。

 黒く染まってきていた体と意識は、再度色を放ち、彼女の周りだけ少し、彼女につられてか、色を帯びてきていた。

 未だそれに気付いてない彼女は、動かそうとしても、動かなかった手足を動かそうと試みる。

「!?」

 自分の意志通りに動く手足。

 動いた事に驚く彼女。

「えっ?何で…」

 驚いた彼女は、呆然としてしまう。

「動いた?えっ!?嘘!?さっきはまるで駄目だったのに、今になって動くだなんて…」

 驚き過ぎて、思考が止まった途端に、彼女の周りの色が黒くなり、また体も黒く染まってくる。

 更に手足も動かなくなる。

「あれ?ん?…ヤダ嘘…。また動かなくなったわ…何なの…?動く様になったと思えば、また動かなくなるだなんて、一体何がどうなってるの?アーーーッもう!意味分かんない!ムカつく〜!私にどうしろって言うのよ!」

 何の説明も無いまま、1から何かをするのは、とても大変な事であって、今正に、その大変な事を成し遂げなければいけない彼女。

 手掛かりが全く無いと、途方に暮れていた彼女なのだが、(?)最初の手掛かりとなる現象に、気づこうとしていた。

 イライラ感が高まり、不満爆発しそうな程、怒りを覚えた途端、再度色と意識がハッキリとしてきて、手足をバタバタと、動かせる様になったのだ。

「えっ!?」

 また動く事が出来て、驚き思考停止した途端に、ピクリともしなくなる手足。

「もぅ何!?動いたり動けなかったり、ハッキリしなさいよ!何なのよもぅー!」

 暗闇相手に文句を言い、苛立ちの感情が高まった時、また手足が動いたのだ。

 この時、再度動く手足に気付いたのだが、先程とは違い

「どうなってるの!?出来たり出来なかったりして、本当苛つく!アーーーーーッ!!」

 動かせた事を喜ぶのではなく、何故、動かせたのかが、未だに理解出来なくて、その事に感情が爆発してしまい、出せるだけの大きな声で叫んだ。

 自分でもビックリするくらいの、大きな声で叫んだ事に驚き

(ヒィャッ!えぇっ?私、こんなに大きな声出るんだ…)

 と、思ったその時、更なる変化が起こる。

 彼女を中心に、暗闇に光が発せられ、色を持ち始めたのだ。

「キャァー!えっ!?何なに!?」

 突然の現象に驚き、また思考停止してしまう。

 するとまた、闇が彼女を侵食し、体が動かなくなってきた。

 この現象によって、ようやく理解し始めた彼女。

 何かしらの感情が昂ぶるか、強い意志を持った時には、動く事が出来、暗闇が薄まって、自分の周りが色付く事に。

 普段通りや、何も考えずにいた時には、闇が侵食して動けなくなると、彼女は理解した。

(何となくだけれど、心の持ち方をずっと強く思い続けていれば、暗闇に抵抗出来るのね…。唯、どう言う仕組みで闇を跳ね返してるのか、闇が私を侵食してるのかは、分からないけど…)

 それでも今の現状を打破出来るかもと、先程気付いた謎も、一つ一つ、解き明かせる様な気がしてきた彼女は、心を強く持ち続けていく事を決意する。

 だがそれをするのは、常人の成し得るモノではなく、精神が続く訳がなかった。

 訓練されたモノでも、絶えず気持ちを強く保ち続け様としても、何処かで必ず精神力が衰え、酷使した分、回復する迄の時が必要になる。

 何の訓練もしていない彼女は、心を強く持ち続ける難しさに気付く迄、さほど時間は掛からなかった。

 意識して、心を強く保とうとしても、頭の中に別の事が浮かんでしまい、一定に意識を保てない…。

 動けなくなれば、意識が弱くなった合図になり、意識を強くしてはまた直ぐに、動けなくなるを何度も繰り返していた。

 人は、同じ事、同じ作業を繰り返すと、飽きて作業を止めてしまい、一旦止めると、再度作業をする気になる迄時間が掛かり、結局は放ったらかしになる。

 でもそれは、切迫詰まってないから出来る事であり、今の彼女には、そんな余裕は無かった。

 闇の侵食スピードが、思いのほか早く、気を抜く事が出来ない。

 更に少しずつだが、侵食スピードが増してきた気がして、焦る気持ちも付け加わり、疲弊してきた彼女は

(ハァ〜…キツい…。繰り返すって、拷問だわ…)

と、思ってしまう…。

 拷問に思えて辛くなった彼女は、気を紛らわそうと目を閉じ、鼻歌を口ずさむ彼女。

「フゥ〜フ〜フフ〜ン、ラ〜ラ〜ララ〜…」

 透き通る彼女の歌声。

 鼻歌を歌いながら、閉じていた目を開くと、彼女の目に映ったのは、暗闇が彼女から遠ざかっていき、彼女を優しく包む、白い綿の様な絨毯と、色鮮やかな草花達。

 彼女を包む白い絨毯は宙に浮かび、自由気ままに漂っていた。

「キャァッ!…な、何?一体、何が起こったの…?」

 唐突過ぎる変化について行けず、思考が止まる。

 そんな彼女に、お構いなしと言わんばかりに、更に勢いを付けて、闇が迫り来る。

 迫る闇の速さに、一瞬怯んだ彼女だったのだが

「少しは気遣いってモノは無いの!?アンタしつこいのよ!少しぐらい、考える時間頂戴よ!」

 フラストレーションを溜め続けた彼女が、闇に向かって、声を荒げた。

 余程苛ついていたのか、猛スピードで迫る闇が、彼女の強い意志いかりに反応し、ゆっくりと少しずつ後退していく。

 フーッフーッフーッと、息を荒くし闇を睨む彼女。

 腹立たしいと思いながら闇を睨んでいたら、後退する闇の変化に、何となくだったのだが、違いに気付く彼女。

「あれ?鼻歌の時とは、暗闇が遠ざかるスピード違わない?鼻歌の時はもっと早く、もっと広く遠ざかっていたのに…」

 意志を強く持っていれば、闇に侵食される事は無いと、更に意識を保っていたら、闇を自分から引き離す事が出来るとも、繰り返しているうちに、そう彼女は理解した。

 なのに、気持ちを切り替える為に、強く保ち続ける為に、軽い気持ちで鼻歌を歌っただけなのだが、鼻歌を歌う方が何故か、闇を引き離す範囲やスピードなどが、広く大きく早く思えた…。

 しかも、意志を強く持って臨んだ時には、周りの風景など見えなかったのに、歌を歌った時は、風景どころか、鮮やかな色さへもハッキリと見えていた。

 その違いについて、彼女が考えていたら、彼女の怒りの感情で、少しずつ遠ざかっていた闇がまた、今度は容赦しないと言わんばかりに、スピードを上げて、襲い掛かる。

 それに気付いた彼女は、どうせ何をやっても、闇を完全に振り払わない限り、同じ事の繰り返しなのだからと、ダメでもいいから、思い付く限りの手を試そうと、歌を歌う。

 もしダメなら、また別の手段を考えればいいと、思った。

「ラ〜…ラララララ〜…ン〜ウンゥンウンゥンウンン〜…」

 歌い始めた途端、透き通る彼女の歌声は、この空間に響き渡り、彼女を中心に色付き始め、生命を宿していくかの様にも思えた…。

 それと同時に、闇が晴れていくのも分かったのだ…。

(やっぱりそうだったのね!同じ意識を強く持つにしても、穏やかな心で歌った方が、闇を押し除けられるのね…。よしっ、このまま歌い続けていこう!)

 突破口が分かった彼女は、この闇が支配する空間に来てから、初めて穏やかな気持ちになれた。

 ずっと会いたいと思っていた人との、約束した時間にはもう間に合わないが、先ずはこの異質な場所から抜け出さなくては、何も始まらない。

 その為には少しでも早く、この異質な空間を解明し、抜け出す為に、彼女は歌を歌い続けていく。

 彼女にとって希望となる歌を、彼女の澄んだ歌声で、歌い続けていく…。

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