Chapter 1-6 罠を確認してみます

 では早速狩りをしてみようということになり、きらめたちは大樹のふもとから少し離れていた。


「弓を教えたけど、基本は罠よーう、罠!」


 そう語るドラに付いていくと、なにやら網のようなものがぶら下がった木が見えてくる。

 枝から吊り下がった網が揺れて、木がしなっている。どうやら罠にかかった動物がいるらしい。


「今日は何が獲れたんだなー?」


 パタパタとノンが先行する。普段はのんびりすぎるほどのんびりなのに、こういう時だけはやたらすばしっこい。


「ノンー! 何が獲れてるのよーう!」


 一足先にと網を覗き込んだノンが振り返る。その面持ちは、一言で言えば微妙だった。


「みんなー、これー」


 ぞろぞろと、きらめたちはノンの元へ集まり、網の中を覗く。


「これは……」

「うりぼう、だね」


 網の中にいたのは、一匹のうりぼうだった。小さな小さな猪の子供が、逃げようとして網の中をじたばたじたばたしていた。

 きらめたちの視線が集まると、うりぼうは動きを止めてきらめをじっと見つめてきた。


 うるうる。


「こんなとこに珍しいっしょ」

「でも貴重な食料よーう!」


 うるうる。

 あわあわ。


「足りるしー?」

「ちょっと無理なんだなー」


 うるうる。

 あわあわ。あわあわあわあわ――!


「とにかく網を外して……って!」


 ドラが網を回収しようとしたところで、


「お達者でー!!」

「なんで逃がしちゃってるのよーう!!」


 すでにきらめが罠を解除し、うりぼうを逃がしてしまっていたのだ。


 そしてきらめとうりぼうは、この僅かな間に芽生えた友情に涙していた……!


「え、ちょ、ちょっと!」


 戸惑うドラを余所に、うりぼうは森の奥へ駆けて行きながらも、時々立ち止まってはこちらを振り返る。

 その目に、別れを惜しむ涙を湛えながら……!


 いつしかディーもノンも、ルフェさえも、涙を浮かべてうりぼうへ手を振っていた。


「もう捕まるなしー!」

「強く生きるんだなー!」

「泣けるっしょ……達者でな」


 みなが涙とともに思い思いのエールを叫ぶ中、


「え……!? え……!? う、うわーん!! 元気で暮らすのよーう!」


 最終的にドラももらい泣きして大きく手を振り始めた。


「いつか……いつかまた会おうねー!!」


 やがてうりぼうが見えなくなってしばらくすると、ドラがハッと気を取り直す。


「今日のご飯、どうするのよーう!」


 ドラは別の理由で、また泣きそうになった。

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