第22話
「鈴原さん?」
「あ!ごめんなさい少し考え事をしてて」
いつも通り2人で図書館の椅子に座りながら話していると曇ったような表情を浮かべる。
「それで何の話をしていたんでしたっけ?」
「いいんですそんなに大した話でもないので」
「本当にすいません!」
「本当に対した話じゃないので気にしないでください!」
「余計なお世話だったら申し訳ないんですけど、今悩んでいることとかありますか?」
余計なお世話だと分かっていつつも尋ねる。
「いいえとくにありません」
「そうですかそれだったらいいんです」
鈴原の曇った表情は今まで何度か見ているが今さっき浮かべていた表情は今までのとどこか違うような気がした。
「俺いつもより少し早いですけど自分のクラスの方に行きますね」
なんとなく気まずくなってしまい自分のクラスに向かう。
「おはよう、今日はいつもみたいにギリギリの時間じゃないんだな」
「たまには余裕を持って教室の方に来てみようかなと」
苦笑いを浮かべ答える。
この時間はまだ先生が来ていないらしく前の席に座っている女子生徒2人は会話を楽しんでいる。
「ねえねえあの噂聞いた?」
「聞いた聞きた図書館にいる女子生徒の話でしょう」
「そうそう何でも普段は授業に出席しないでずっとあの図書館に引きこもって本を読んでるみたいだよ」
「よくある幽霊とかの話じゃなくて本当にこの学校に投稿してる生徒なんでしょう」
「だけど私その女子生徒1回も見たことないからやっぱり幽霊なんじゃない」
前の方にいる2人の女子生徒の会話を聞いていると、鈴原の顔が頭に思い浮かぶ。
進藤さんと前にキャッチボールをしてた時俺が変な方向に飛ばしてボールを探しに行ってたまたま何人かの生徒たちが同じ話をしてたような気がするな。
俺は興味本位なのか何なのか自分でもよく分からないままその女子生徒2人に近づきいつのまにか話を聞いていた。
「いきなりで悪いのですがその話の詳細を聞かせていただけませんか?」
その女子生徒2人はお互いにこいつは何なんだろうと顔を見合わせた後こう話し始めた。
「今この学校の中で噂になってる有名な話だよ」
「あなた知らないの?」
「ええまぁ…今までそういうことを聞く機会がなかったので」
「今話してたのは図書館の幽霊の話しだよ」
それは自分の席に座っていた時にも聞こえた。
「図書館の幽霊?」
その話自体は知っているがここはあえて知らなかったふりをして尋ねる。
「生きているのか死んでいるのかもわからないこの学校の制服を着た女子生徒が毎日毎日この学校の図書館に朝早くから来て、本を読んでるんだって」
「でもその話を聞く限り今噂になっているその女子生徒がもし仮に本当の幽霊だったとしてもそんなに広まらないと思うんですけど」
「それがたまたまこの学校の女子生徒がこの場所に忍び込んで図書館に行った時にその幽霊を見たんだって」
話だけ聞いているとよくある学校の七不思議的なものに聞こえるが、その幽霊の少女が仮に俺の予想通り鈴原だったとしたら誰が何のためにこの噂を広めたんだ。
「その噂ってだいたいどのぐらいから広まり始めたんですか?」
「私たちもよくは知らないけど比較的最近の噂だよ」
「そうですかありがとうございます」
と言って俺は自分の席に戻る。
「篠崎にしては珍しいな自分から他の生徒に話しかけに行くなんて」
「ただ少し気になることがあっただけです」
「気になること?」
噂を広めている犯人を突き止めようなんてそんな無謀なことをするつもりはないが、もしこの噂が鈴原を傷つけるような噂に繋がっているんだとしたら放っておくわけにもいかない。
先生が教室の中に入ってくる。
「全員静かにしろ」
言いながら手を3回叩く。
「いつも通り出席を取っていくぞ」
それから順番に名前が呼ばれていく。
「篠崎って怪談話が好きなのか?」
周りの生徒たちに迷惑にならない程度に声をひそめなぜかそんなことを聞いてくる。
「いや別に好きかと言われれば普通です」
ホラー小説や漫画を特に読んでいるかと言われれば普通だ。
「そうなのかわざわざあの女性と2人にさっき聞きに行ってたからそういうのが好きなのかと思ったんだけど」
「嫌いかと言われればそこまででもないくらいです」
同じように声をひそめ言う。
「そこさっきから何くっちゃべってるんだ授業に集中しろ!」
「すいません」
「は~い」
俺とは対照的にけだるそうに言葉を返す。
それからしばらくしてお昼休みの時間になり、俺はさっきの噂の情報を集めようと隣のクラスに行ってみることにした。
情報集めの目的で隣のクラスまで来ちゃったけどよくよく考えてみれば俺今まで隣のクラスに来ることなんてなかったから緊張するな。
「このクラスの中に今この学校で流行ってる噂についてよく知ってる人っていますか?」
そんなざっくりとした情報だけでこのクラスの中に噂話が好きな生徒がいたとしてもわざわざ手を上げてくれるかと口にした後思ったが。
1人の真ん中の席に座っている女子生徒が手を挙げ元気よく返事をする。
すると俺の方に嬉しそうな表情でかけてくる。
「最近流行り始めた噂で言うとあれですかやっぱり図書館の女の子の話ですか!」
その女子生徒はいきいきとした表情で訪ねてくる。
すぐその噂の話が出てくるってことはこの学校の中でその噂がかなり広まってるってことか?
さっき同じクラスの女子生徒2人から聞いた噂話を女の子に聞かせてもらい他に何かないかと尋ねてみる
「そうですね他の図書館の女の子の話で言うとその女の子が本を読んでいるところを邪魔すると勢いよく噛み付いてきて骨も残らないっていう噂です」
最初に聞いていた噂からだいぶ恐ろしいものになったな。
「まあ今回のこの噂だけに限らずまことしやかに囁かれてる物っていうのは何が本当で何が嘘なのか分かりませんから」
教えてくれてありがとうございますとだけ伝えその日は家に帰った。
自分の部屋の中で特に何もせずぼーっとしているとプレゼントのことが頭によぎる。
「そうだ鈴原さんに何かテストの対策に付き合ってもらったお礼をしないと」
と言いつつも女の子に何をプレゼントしたらいいのかわからないので、 再びスマホの検索窓のところに適当に女子校生プレゼント喜ぶものと入力する。
上の方から順番に見ていくと可愛い箱に入ったクッキーがプレゼントに向いていると書かれている。
「学校に持って行くにはリスクがたかすぎる」
「前にプレゼントをあげようって探してた時も同じこと言ったんだっけ?」
「本が好きだから何か本に関連するものをあげたいけど何を見ればいいんだ」
検索窓に入力してきた文章を一度全部消し本を読む時に使える小道具と入力し検索をかける。
「売り物としてはないけど自分で作ってる人は結構いるみたいだな」
本のしおりを作るための必要金額を調べてみたが相当安く作れるらしい。
「簡単に作れるものもあるみたいだけど俺が作ると不格好な見た目になるんじゃないか」
とはいえいつまでもこうやって悩んでいたら前に進めないと思いとりあえずしおりを作ってみることにした。
「変に冒険をしようとせずデザインとかにあまりこだわらなければそんなに作ること自体は難しくはないはずだ」
「喜んでくれるといいんだけど」
スマホで必ず必要なものを調べ早速製作に取り掛かる。
必要なものを買いに行って製作に取り掛かったのはいいがこれで本当に喜んでくれるのかという不安が消えずなかなか作業に集中できない。
「とりあえず途中まで作れたから残りはまた今度作ろう」
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