第4話 クラスメイト

僕が通っている高校は中学校から少し離れたところにあるため

中学の時の友人は親友の佐野東弥一人しかいない。

佐野東弥は僕の小さい頃からの親友で今でもその関係は続いている。


「なあ、花咲、、お前なんで最近、あの、深町さんと妙に仲がいいんだ?」


「えっ?」


「いやいや、なんか、お前らが朝の時だけいちゃついてるって噂が立ってるんだぞ」


「えっ?!なんで?!」


俺はそう言われて少し焦ってしまったし、一体誰に見られていたんだろうと少し恥ずかしい気持ちも出てきた。


「なあ、噂って本当なのか?」


「いや、ただの噂だよ」


「まあ、そうか、俺らみたいな人には手の届かない人だからな」


「そうだね」


俺は少し焦っていたがなんとか隠すことができた。


しかしよく考えてみると、僕と深町さんにはあまり関わりがないのになんであんなに関わってくれるのだろうか。


僕は少し疑問を持ったがフライヤーさんが言うように自分が知らないうちに何かあったのだろう。

そう自分を納得させ、考えるのをやめた。


昼食時間、いつも俺は昼食を佐野と食べるのだが今日は佐野が委員会で一人で食べることになった。

教室はガヤガヤと静かになる気配はなかったが自分のところだけが静かな気がして少し寂しいと感じてしまった。


(はぁ〜今日は一人で静かに食べるか)


俺が弁当を開き箸を持って食べようとすると急に声をかけられた。


「ねえねえ、隼人君」


俺が振り向くとそこには弁当を持った深町さんが立っていた。


「あれ?深町さん?」


「深町じゃなくて?」


「あ〜蛍さん」


「それでよし!じゃあ、私と一緒に食べませんか?」


「へっ?」


僕は驚いて変な声が出てしまった。


そう言うと隣の席を僕の机にくっつけて弁当を開き始めた。


「あれ?いつもの人と食べないの?」


「それはね、今日は隼人と食べたいな〜と思って」


「ああ、そういうことね」


僕は簡単に流したが内心すごく驚いていた。


(深町さん!なるべく朝だけの関係って言ったよね〜!)


食べ始めるとそれに気づいた男子は驚きと嫉妬の眼差しが飛んできて、

女子からは何故か優しい眼差しで見られている感じがする。


(いやこの状況めっちゃシュールじゃない!?)


「ねえねえ、隼人の弁当、美味しそうだね」


「ああ、親に作ってもらってるんだけど一部は自分でも作ってるよ」


「へ〜」


俺は少しだが料理が好きで弁当も卵焼きやちょっとしたおかずを毎回入れるようにしていた。


「じゃあ、隼人が作ったおかずってどれ?」


弁当をまじまじと見てくる深町さんに押されながら、僕は自分で作った卵焼きを指差した。


「自分で作ったおかずはこの卵焼きくらいだよ」


「へ〜卵焼きか〜」


僕は指差した卵焼きを箸で取って食べる。


卵の甘みもあるが少し塩気も感じられて自分好みの味付けになっていた。


食べている姿を何故か深町さんにまじまじと見られ恥ずかしくなってきてしまった。


「あの、、あんまり見ても何も出ないよ」


俺が声をかけると、ハッとなったように少し焦り始めた。


「そうだね、ちょっとボ〜ッとしちゃって」


「それ大丈夫なの?」


「あははは、大丈夫、大丈夫」


そう言って少し急いで自分の弁当を食べ始めた。


「あっそうそう、私も卵焼き入ってるよ!」


そう言って箸で卵焼きを持ち上げパクッと食べた。


「んん〜美味しい〜」


「美味しいそうだね」


「ねえねえ、私の卵焼きと、隼人の卵焼き交換しない?」


「えっ別にいいけど」


「やった!」


そう言って俺は弁当箱の中に入っていたもう一つの卵焼きを深町の弁当に入れた。


深町さんは卵焼きを箸でつかむと弁当ではなく何故か僕の顔の前に持ってきた。


「はい!」


「いや、はいって言われても」


僕が突っ込むと深町さんはキョトンとした顔で見つめてくる。


「卵焼きいらないの?」


「いや、そう言うことじゃないけど」


蛍は全く食べさせることを普通にやっているのでこっちも言い出しにくかった。


「じゃあいいじゃない、はい!」


僕は覚悟を決め、差し出された、卵焼きを頬張った。


その時、周りからは女子からは黄色い歓声が男子からはドス黒い声が聞こえた気がするが

まあ気にしないことにしよう。


卵焼きは僕の味付けとは違い、少し甘めの味付けだったがとても美味しかった。


「どう?美味しい?」


「うん、、美味しい」


「それならよかった〜」


「味付けって甘くするんだね」


「うん、私甘い卵焼きが好きなの」


「へ〜僕は、ちょっと塩気がある方が好きだけど、こっちも好きだったな」


「そうなんだね〜」


そう言ってまた深町は弁当を食べ始めた。


「隼人君ってさ、はまってるゲームってある?」


「はまってるゲームか、、あげるとしたらfpsかな」


「fpsか〜意外かもしれないけど私も結構やってるよ」



「へ〜意外だな」


「意外と集中するゲームとか戦うゲームが好きなんだ〜」


深町さんは意外とゲームとかしないように思っていたけど結構やってるタイトルとかを

聞くと結構なゲーマーだとわかった。


その中には俺もはまっているバレットオンラインの名前も上がっていた。


僕らが話に盛り上がっていると昼食の時間は終わろうとしていた。


「あれっ?!もう結構経っちゃってる!」


「食べ終わった?」


「まだだよ〜」


僕は食べ終わっていたがまだ深町が食べ終わっていなかった。


食べ終わると、深町は席を戻して、いつもの友人の元へ帰っていった。


俺が体を伸ばしているとゾロゾロと男子が僕の席の周りに集まってくる。


その視線はもはや殺気も纏っているほどすごい目つきだった。


「どうしたの?みんな」


「なあ、こいつどうする?」


「山に埋めるか、海に沈めるか」


「ねえ、怖いんだけど〜」


僕の席はずっと男子に囲まれ、もはや尋問が行われ始めた。


一方女子の方では


「ねえねえ、まだ告白とかしてないの?」


「もうしちゃえばいいじゃん!」


「え〜まだ早いよ」


こちらもこちらでさっきよりは軽い取り調べが行われていた


「でも、なんでみんな知ってるの?」


「いやいや、女子はね、そう言うのに気が付きやすいんだよ」


「でっどっちから関係を持ち始めたの?」


「それは、、、私から」


そう言うときゃーと歓声が上がった。


「でも、高校からの関係だよね、そんなに学校で関わってないのになんでそんなに仲がいいの?」


「それは、中学生の頃から、オンラインゲームで知り合って高校でその一緒にやってる人が隼人くんだって気づいたの」


「へ〜なんかそんな出会い方いいね、でもよく気づいたね」


「なんか、声が好きで気づいたの」


「へ〜!」


「でも、なんで花咲君は気づかないのかな〜そもそもなんで話さないの」


「それは、ゲームの時の私と、今の私が違いすぎるから

引かれないように話さないようにしてるんだ」


「そんな、花咲君は優しいからそんなこと言わないよ!」



「それは私もわからないけど、今はまだ話さなくていいかなって思ってる」


「まあ、頑張って!」


「うん!」


教室に帰ってくると隼人君がぐったりと机に突っ伏していた。


「大丈夫?」


「まあ、なんとか」


「それにしてもなんで男子は隼人にそんなことするんだろうね!」


(あなたのせいだよ〜)


僕は心の中で思ってしまったが喉の奥にしまい込む。


「僕にはわからないな〜」


すっとぼけた感じで答えると


「隼人君は私の大切な人なのに」


そう言った瞬間、俺は一瞬思考が止まったし、女子はまた何か楽しそうに見ているし、

他の男子の何かが儚く崩れる音がした気がする。






















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る