創世記―はじまりの物語―より


むかし、昔のお話です。


心優しい若者と一緒に魔王に立ち向かった赤毛の剣士は、世の中が平和になった後も孤独でした。

大切に思っていた人を亡くし、心折れ、前に進む気力を無くしていたのです。


剣士の心は疲れ、その気持ちを誰にも言えないまま、自分の時を止めて逃げてしまいました。


残された若者は悲しみました。


友を失ったこと、友の気持ちに気付かなかった事を激しく後悔しました。


しかし、若者は赤毛の剣士は失いましたが、一人ではありませんでした。

周りにはたくさんの仲間や家族がいました。


彼は再び立ち上がると決意しました。


友が帰って来た時に、幸せになれる国を作ろう、と。


若者は国造りに邁進し、そのうち若者ではなくなりました。


それでも、仲間や家族、子供たちに囲まれて、彼は幸せな人生を送りました。


いつか、赤毛の剣士がこの国で幸せになってくれればいいと願いながら。




赤毛の剣士が目覚めたのは、五百年も後のことでした。


心の傷を、黒髪と金の瞳の少女と共に癒した赤毛の剣士は、友の残した国を守ろうと再び剣を取って立ち上がりました。


……これが、我が国アルカーナの未来の物語。


幸せな物語のはじまりはじまり。



【新・子どものための創世記より抜粋】




❖おしまい❖


2023.2.23 了

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