仏蘭西菊洋装店〜Under the Oxeye Daisies〜

フランス菊の花咲く下に

プッシング アップ デージー

　雛菊（デージー）の花の下には、死んだ誰かが埋められている。死んだ誰かは肥料となって、土の中から雛菊（デージー）を芽吹かせ育み花咲かせる。

　pushing up daisies—— プッシング　アップ　デージー。「死」や「埋葬」という意味の慣用句。

　仏蘭西菊（オックスアイ・デージー）の名のついた洋装店の奥にあるのは、硝子（ガラス）の棺（ひつぎ）。中に納められているのはラファエルという名の美少年。

　彼を餌（え）にして咲いているのは、生と死の狭間の時間（デージー）。

　なんのことだか、わからない？

「ようこそ、仏蘭西菊洋装店と青猫商会へ。

　そのご説明も兼ねながら、どうして、わたくしたちがこの店で働くことになったのか、お話ししましょう。

　今、お菓子とお茶をご用意します。

　遠慮なさらず、どうぞ、ゆっくりなさってください。

　まずは、仏蘭西菊洋装店で、レースの編み手として働くわたくしのことからでも。

　途中で、青猫商会の彼も、生い立ちを語りに参ります。

　そのお話も楽しみに。

　死出の旅の装いを整えてご出発までには、まだまだ時間もあることですし」