第6話   お昼休みは誰と


失意の告白から一日が過ぎ、僕の心もだいぶ持ち直していた。


昨日は幼馴染に告白しようとして見事に失敗。

結果彼女を怒らせてしまう。


あんなに怒った彼女を見たのは初めてだった。

僕のダメージも大きく、深く落ち込んでしまう。


そんな中で姉の友達に拾われた。


「でも勘違いしちゃだめだ」


あまりにも僕の様子が不憫で、ほっとけなかったんだ。

そうでなければ、菊池さんのような美少女とお付き合いできるわけがない。

『間違ってもモテてるなんて考えないようにしなければ』



お昼休み時間

学食にいかない生徒は、机をくっ付けて楽しそうに食事をしていた。

僕もボッチ飯は寂しかったので、偶然隣の席だった同じ中学の子と何となく一緒に食事を取っていた。


「うちの生徒会長見た?」


「見た。すごい美少女だね」


「そう、あとすっごく小柄で可愛いよね」


「でも、あれで力は強いんだよ」


「へー何で知ってるの」


しまった!

余計なこと言ってしまった。


その子は教えてとしつこかったけど、この秘密を言う訳にはいかない。


「もうケチだね君は」


「はいはいケチで結構」


そんな馬鹿話をしてたら、教室がざわついた。


「こんにちは、お邪魔するね!」


「失礼します!」


少し長めのスカートにセーラー服姿の女子生徒が入ってきた。

リボンは緑色。3年生だ。

突然の最上級生の訪問に、教室でお弁当を食べていたクラスメイトたちは目が点になった。


「だれ、あの美少女二人!」


「3年の生徒会長と副会長だよ」


「なんだか三年生って雰囲気が大人よね!」


「小さくて可愛いお持ち帰りしたい!」


そういった生徒を人を笑顔で黙らせ、彼女は僕の机の方へ近づいた。


「航大!一緒にお弁当食べよ!」


「お邪魔しますね!お弁当持ってきたよ」


現れたのは現生徒会長菊池風花さんと、姉の琴葉さんだった。


「何でここに」


約束した記憶もない


「まさかそこの子食べるから私達はお邪魔とか」


「え、私ですか」


「お前名前なんだっけ」


「ひっどい。同じ中学だったのに忘れているなんて」


「いや、おなじクラスなったこと無いよね?」


「てへへ」


「・・・仲良さそう」


「ふーん」


なんだかこのあたりだけ、空気が冷えてません? 僕寒くなったよ


「いつの間にか女の子たらしこんでさ。お姉ちゃん心配だよ」


「僕たらしこんでないよね!」


「えーどうかなー」・・・こいつ


「航大くん。一応あたし達付き合っているんだよね?」


「えーっと」どうだっけ


「確かデートプランが勿体なくて、責任取って付き合ってください」って言ったよね。


・・・はい、確かに


これは・・・二人はこちらをジト目で見ていた。


「えーでも、暫定措置だったような」


「でも好きな人がいなければ自動更新だよ」


でしたね。 よく覚えてます

でもほんとに良いんだろうか


僕は改めて先輩のことを見た

身長は僕よりだいぶ小さくて150センチくらい。

その割に胸部装甲は充実してた。


「今なんだか嫌な視線が」

おまけに気配察知にも優れている。


「とりあえずみんなで仲良く食べましょよ。もうすぐお昼時間も終わるよ」


「そうね、食べましょうか」


「ええ」


「うん」


ひとまず彼女の一言で一時休戦した。





「航大くんのお姉さんなんだ。あれ君一人っ子だったような」


隠すほどでもないので僕は彼女とのいきさつを説明した。


「なるほど、従姉弟で今はお姉さんなんだ」


だからあんまり関係性はかわってない。


「違うよ!だってお姉ちゃんになったんだよ」


あんなこともしたい!こんなこともやってみたい!

ほっといたらいつまでも喋りそうだった。


そんな姉の暴走を止めたのは菊池さんだった。


「でも琴葉、航大くんだってもう高校生なんだよ。いい加減子離れしないよ駄目だよ」


菊池さんはお母さんみたいですね


「そろそろお昼も終わりだから」そう言って姉たちはお弁当を片付け始める。


「おっと、大事な話忘れてた!」


「大事な話?」


「航大部活に入る予定とかある?」


部活か


僕は中学と同じ吹奏楽部入りたいと伝えた。


「じゃあ、あたしも一緒に入ろうかな」


「時間があればうちにも来て欲しいな」


まさか


「そう!生徒会執行部よ!」


「経験者歓迎よ!」


「いや」


歓迎はいいです


あのときは幼馴染がいたから頑張れた。

二人でいろんなイベントこなして、仲を深めて


・・・あれ


僕は慌ててみんなに背を向けた。


中学の生活は彼女といつも一緒だった。

想い出してしまった。


みんなが心配そうにこちらを見ている


「大丈夫泣いてないよ」でも声はしっかり震えてた。

「ごめんね」後ろからふわっと抱きしめられた。


「あたってるよ」そう言ったけど

何のことって言われ、さらに強く抱きしめられた。


『あててんのよ!』

幼馴染の言葉が笑顔と共に脳内で再生された。


僕の生活に入り込んだ彼女は、今でも僕を縛り続けている。


「その役あたしがやりたかったなー」って菊池さんの声が聞こえた。


こんな泣き虫はポイしないと駄目ですよ。


昨日に引き続き泣き出してしまった僕は

ひょっとしたら年上キラー称号が取れるかもしれない。



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