鉄鉱石を採掘をしながら、ゴブリンと争うこと3時間。


 俺のレベルは6へと成長。また、戦闘の合間合間ではあったが、鉄鉱石の採掘に何度か挑戦することで、ようやくスキル【採掘】を習得した。


「習得おめー!」

「アオイ君、おめでとうございます!」

「ありがとう」

「鉄鉱石も目標を大幅に超えて採れたし、そろそろ帰るー?」

「レベルもいい感じにあがったし、帰るか」

「はい!」


 レベルが上がり、ゴブリンの危険度はブルー――格下になったこともあり、帰路はすべてのモンスターを無視をしてカナザワシティを目指した。



  ◆



「あの……アオイ君、ミランちゃん、少し落ちてきてもいいですか?」


 カナザワシティに帰還すると、カリンが申し訳なさそうに告げる。


「ん? うちは問題ないけど、どうしたのー?」

「えっと、ご飯とか宿題とか……」

現実リアルの時間は7時10分か」


 俺もリビングに行けば、ご飯が用意されているだろう。タイミングが合えば、家族と一緒に食べることもあるが……うちの両親は学校の成績が最低限維持されており、他人に迷惑をかけない限りは放任してくれている。


「もうそんな時間なんだ! ライオンの中だと時間はゆっくりになってるはずなのに、あっという間だね」

「俺もご飯落ちするか」

「んじゃ、うちも! 集合は何時にする?」

「宿題もあるので、9時でもいいですか?」


 9時。ここで2時間のロスか。とは言え、悲しいかな……俺も高校生。宿題は存在していた。宿題を放棄し、成績が下がれば、両親は俺から容赦なく自由ゲームを奪うだろう。


 1日にログインできる時間は8時間。そして、俺が帰宅する時間は大体16時。そうなると、帰宅してぶっ通しでゲームをすればちょうど8時間だが、ご飯などを考慮すると現実的ではない。毎日19時~21時をご飯、風呂、勉強の時間にあて……2時までプレイすれば、1日8時間のプレイ時間が確保できるし、カリンやミランとの生活サイクルとも合うだろう。


 しばらくは、この生活サイクルで過ごしてみるか。


「それじゃ、9時にここで集合でいいか?」

「はい! ありがとうございます!」

「了解ー!」


 俺は健全なゲーム生活を送るべく、ログアウトするのであった。



  ◆



 21時。


 夕飯を食べ、お風呂に入り、宿題を終わらせた俺は再びライブオンラインの世界へログインした。


 現実世界と時間の流れが違うから、現実世界で1分遅刻すれば、こちらの世界で相手を3分待たせることになり、10分遅刻すれば30分待たせることになる。


 3分なら待てるけど、30分はキツイな。


 虎太郎のように現実世界リアルでも知り合いだったら連絡先を交換してあるから、どうとでもなるが……さすがにカリンとミランの二人と連絡先を交換するのは……無理だ。


 そういえば、前は寝落ちしたら虎太郎がよくスマホを鳴らしてくれたっけ……。などと思い出にふけっていると、


「わわっ!? お待たせしました」


 カリンが現れ、


「あら? うちが一番遅かったかー。ごめん、ごめん」


 時間を置くことなく、ミランも現れた。


「俺も今ログインしたばかりだ」

「私も本当についさっきログインしたばかりだよー」

「それなら良かった。んじゃ、早速だけど装備品を強化しに行こう!」


 合流するやいなやミランを先頭に工房へと向かうことにした。


「あ、そだ! 二人に質問!」


 先頭を歩いているミランは歩いたまま、質問してくる。


「ん? なんだ?」

「ミランちゃん、なに?」

「えっと、鉄鉱石いっぱい採れたでしょ?」

「そうだな」

「だから、ドロップ品……具体的には『破損したナイフ』と『ボロボロの皮鎧』。後は、ほんの少しのお金……正確には原価を提供してくれたら、二人の装備品を一式作るけど、どうする?」

「悪くない話だ。ちなみに、その装備品一式を強化することは?」

「んー、素材の数的にそこまでは厳しいかな」

「なるほど」

「私はミランちゃんにお任せしてもいいですか?」

「オッケー! カリンのはうちプロデュースで仕上げるね」

「ちなみに、アオイの分で作る装備は兜、鎧、具足で……籠手以外に兜か具足くらいは強化出来るかな」

「なるほど。ミランが作ってくれるなら、付与された効果を見てから決めてもいいか?」

「もちろん!」

「なら、その方向で頼む」

「オッケー!」


 籠手の強化だけかと思っていたら、防具一式が揃うか。


 偶然出会ったカリンとフレンドとなり、そのカリンの縁からミランと知り合い――結果として、俺は防具を一式揃えることが出来る。


 袖振り合うも多生の縁。


 時には現実リアル以上に、暖かく、深い、人と人との絆。やっぱりオンラインゲームは最高だ、と再認識したのであった。

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