初心者クエストⅢ①
カリンと共に守護者協会に到着。俺は先程と同様に長蛇の列を横目に、『端末』を操作してクエストの達成報告を行った。
(マスター、クエスト達成おめでとうございます。報酬は100Gとなります。今回のクエストを達成したことにより、新たなクエストが解放されました)
クエスト一覧を確認すると新たなクエスト――『初心者クエストⅢ』が出現。
『初心者クエストⅢ』のクエスト内容を確認すると、
『フレンドと狩りに出かけましょう。こちらのクエストはフレンドとパーティーを組んだ状態で、モンスターを50体倒すと達成になります)
50体か。『初心者クエストⅠ』と比べると一気に増えたが、困難な数ではない。
問題となるのは、フレンド――カリンの予定だ。
「カリンさん、この後の予定は?」
「――! え? ま!? だ、大丈夫でしゅ!」
カリンは驚いた表情を浮かべ、盛大に舌を噛んだ。
「お、おう……。このまま『初心者クエストⅢ』を受けてもいいかな?」
「『初心者クエストⅢ』……――! あ、はい! ですよね……。あはは……よ、よろしくお願いします」
カリンは赤面し、引き攣った笑みを浮かべる。
さてと、カリンの承諾も得たから、問題はなにもないな。
俺は『端末』を操作して、『初心者クエストⅢ』を受注。
「それじゃ、狩りに出かけようか!」
「はい!」
俺はカリンと共に狩りへとでかけるのであった。
◆
カナザワシティから出たばかりのエリアはプレイヤーでごった返していた。
「凄い数ですよね」
「少し歩いて空いている場所を探そうか」
「はい」
荒廃した金沢市をモチーフにしたフィールドをカリンと世間話をしながら歩くことにした。
「カリンさんは『初心者クエストⅠ』では誰に師事したの?」
「冒険者師範に師事しましたよ」
「へぇ。俺は攻撃師範に師事して刀を選んだよ」
「私は弓を選びました」
世間話といっても共通の話題は少なく、自然とこのゲーム――ライブオンラインの話となる。
「弓かぁ」
「――? なにかまずかったですか?」
「いや……んー……なんというか……VRMMOだと弓って難しそうじゃないか?」
ライブオンラインのVR世界はかなりリアルだ。剣や槍であれば、なんとなくのイメージで扱えるが……弓だとそもそもの扱い方がわからない。
「あー! えっと、私はほんの少しですが、弓の心得がありまして……」
「へぇ、そうなんだ。ってことは、後衛のアタッカービルドを目指す感じか?」
「えっと、ビルド……? ですか……?」
こちらからの質問にカリンは首を捻る。
「えっと、ビルドって言うのは……どう説明すればいいんだ? どういうキャラクターを目指しているのか、将来設計みたいな?」
「ふむふむ」
「ん? ひょっとして、カリンさんはあんまりゲームとかしないタイプ?」
「あ、はい。お恥ずかしながら……本格的にゲームをするのは今回が初めてです」
カリンは恥ずかしそうに、赤面し下を向く。
「いやいや、別に恥じることじゃない」
「あはは……。友達に誘われて一緒に応募したのですが、その友人とはぐれたと言うか……近くにいないと言うか……」
「あぁ……その友達は金沢市在住じゃないのか」
「――! です! です! 白山市の子です!」
カリンは嬉しそうに声高に俺へと詰め寄る。
「お、俺も似た状況だからな」
俺はカリンに気圧される形に後退りする。
「アオイ君もですか?」
「俺の場合は、一緒に遊ぶ約束をしたフレンドは小松市民だな」
「……あ、なるほど」
「ん?」
「あ!? いえいえ、小松市だと私よりも大変ですね」
「そ、そうだな」
俺は早口で捲し立てるカリンに少し気圧される。
「あ! そうだ! ビルド! えっとですね……私は弓で後方から敵を牽制しつつ、サブアタッカー? と言うのでしょうか、そういう形を目指すのがいいんじゃないか……と、友人に言われました」
「へぇ」
「私の
「そうなんだ。ちなみに、言いたくなかったら言わなくていいけど、どんな
「私の
「【一射入魂】? どんな効果なんだ?」
「説明をそのまま読むと、『一射に魂を込めることができる神より授かりし才』みたいです。効果は正しき構えより放てば、矢に異能を乗せることができるみたいです。本来の意味とは少し違いますね」
「異能?」
「スキルとか魔法といった守護者が授かる能力のことみたいです」
「へぇ」
「込めるべき異能はなにもないんですけどね」
カリンは気恥ずかしそうに苦笑した。
「込めるべき異能か……」
例えば、ファイヤーボールみたいな魔法を込めたら火矢になるのか? ってか、そのままファイヤーボールで飛ばせよ! って話になるか?
んー、どんな異能を込めれば活かせる?
「アオイ君はどんな
勝手にカリンの祝福について考察する俺に対して、カリンが質問を投げかけてきた。
「俺の
俺は腰に差している刀――【千姿万態】を持ち上げる。
「わわっ! カッコいいですね」
「ありがとう。効果は……ん? 効果?」
「はい? どうしました?」
【千姿万態】の効果ってなんだ?
「カリンさんはどうやって【一射入魂】の効果を知ったんだ?」
「えっと、『端末』のステータスから確認出来ましたよ。使い方はナビゲーターが教えてくれました」
「なるほど」
俺は『端末』を操作してステータスを確認。
【青龍の型】
『攻防に優れた構え』
(効果)攻撃性と守備を向上させる
【朱雀の型】
『攻撃に特化した構え』
(効果)攻撃性が大きく向上する反面、守備が低下する
カリンの言う通り、
しかし、俺の祝福は武器だ。
試しに装備品として表示されている『千姿万態』をタッチすると、
【千姿万態】
『形を変えてあらゆる局面に対応することが出来る神より授かりし武具』
どういうこと?
ひょっとして、形とは型か?
【青龍の型】、【朱雀の型】という仰々しい名前のこの構えは、実は俺しか扱えないユニークスキル的なやつなのか?
メティ、【千姿万態】の効果を教えてくれ。
(今ある効果としては、装備することで攻撃力を高めることができることができます)
いや……まぁ……武器の効果っていえば……そうだけど……。
「えっと、俺の祝福は『形を変えてあらゆる局面に対応することが出来る神より授かりし武具』らしく、効果は攻撃力が高めることができるそうだ……」
「わぁ! 何だかとっても格好良いですね!」
「はは……。ありがと」
大袈裟に褒めちぎるカリンに、俺は苦笑するのであった。
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