「敢えて混ぜないマリアージュ。」

「はちカフェのむ?」

こぽこぽとした音やかおり、ほんのりした湯気、泡立つカフェオレ、そんな素敵な喫茶ゆずのきで働く蒼からシーンがはじまります。

蜂蜜は、コーヒーには溶けづらいのだよな、おいしいのだけれど。そんなことを思いながら読み進めました。

4人の人物の視点が交差します。そこへ浮かびあがる、いくつかの出来事。

キャラクター造形、モチーフ運び、色彩感覚や音、どれをとっても秀逸です。溶けにくいと私に思わせたモチーフさえ、すべて巧みにマリアージュされていきます。

短い作品なので、構成がわかりづらく感じられるかも知れませんが、一本の映像作品として、ぜひ見てみたいと思わせる感性溢れる作品です。


ネタバレしたくないので詳しく書きませんが、モネの絵画で緑翠というと、オルセー美術館にある『睡蓮の池、緑のハーモニー』が浮かびます。

敢えて混ぜないマリアージュ、その瞳にうつる、僕たち全員のグリーン。

そしてぼくは、緑になる。

紙の本として、カバンに潜ませたい短編です。