第11話 木次線に乗りに行こう

年末に島根に旅することにして、大阪から島根まではいろんな路線がつながっている。

そのひとつ木次線に乗ることにした。

大阪から岡山駅で伯備線に乗り換えて新見駅まで行くと、乗り換えの待ち時間は1時間ほどあるため昼食にすることにした。新見には満奇洞という鍾乳洞があるのだが1時間で往復するのは難しい。あきらめて駅前でお昼を食べることにした。駅前には新見名物の野菜がたっぷり乗ったうどんを提供している定食屋があるが、コーヒーが飲みたかったのもあり喫茶店に入る。ちょっと変わった喫茶店でケーキ屋と和菓子屋がと喫茶店が一緒になっているので、メニューにも和菓子とコーヒー、ケーキとコーヒー、スパゲティとコーヒーという感じである。スパゲティとコーヒーに和菓子を単品チョイスしていただく。

うん、普通に美味しい。特別ではなくどこの町にでもある懐かしい味である。

お腹も膨れたし、電車の時間にもなったので新見駅に向かう。

ここからは伯備線に乗り備後落合で木次線に乗り換える。

備後落合に着くころには雪が激しく降り始めた。大阪では雪はめったに降らないのでとても珍しいなあと思いつつ、木次線の電車に乗る。1両編成のワンマンカーがゆっくりと雪の中を出発していく。行先は宍道駅、そこから出雲市行きに乗り換える予定だ。

年末なのに木次線の車内は満席になっているが、席に荷物を置き車内から写真を撮っている人が多いことに驚いた。撮り鉄さんというよりは木次線の評判を聞きつけた観光客の様である。

外はどんどんと吹雪になり山の中に入るほど雪が深くなっていく。途中三井野原では長めの停車で、何人かの乗客が降りて写真を撮りに行ったが、発車時刻になっても戻ってこない。写真を撮るのに夢中の様子であった。その仲間が大声で呼び戻す一幕もあり、ようやく電車は発車した。

雪の中をゆっくりと走る電車と真っ白な車窓、窓ガラスは曇っているためティッシュペーパーで窓を拭きながら車窓を楽しむ。すごい雪だった。

外が暗くなり景色も見えなくなったころ、電車が急停車する。「倒木」とのこと。

沿道の竹が線路上に倒れており急停車したのだ。運転手さんが暗い吹雪の中線路に降りて様子をみてくるとあわただしく本部と連絡をとっている。漏れ聞こえる言葉は緊迫感があり応援を要請している様子であった。

車内アナウンスで「竹が倒れこんでいるため運転を見合わせます」とのこと応援がくるまで1時間以上かかるため、車内はざわつき、うろうろする人、面白そうに写真を撮る人など様々である。私が今夜宿泊予定のホテルに事情を説明するため電話を掛けた。

30分以上たったころ、外で作業をしていた運転手さんが戻ってきて徐行で運転を再開してみるとのこと。線路わきの竹が線路に倒れこんでいるがうまくすり抜けられる可能性があるとのことであった。竹の横をする抜けるとき電車に竹の枝葉があたりバチバチと音がする。みんな息をのんで見守っている中電車は竹の倒木をすり抜けることができた。あちらこちらで大きなため息が聞こえたり、談笑する声が聞こえた。みんな緊張した一瞬であったなと思いながら、電車は雪の中を1時間遅れて宍道駅に着いた。

宍道駅での乗り継ぎはさすがに1時間の遅延では、うまくいかず30分以上乗り換えを待つことになったがなんとか出雲市駅のホテルに到着した。ホテルの方が「お疲れさまでした。お部屋の暖房入れておりますのでゆっくりお休みください」とねぎらってくれた。

暖かい部屋と暖かい温泉で生き返ったー!!とゆっくり休むことにした。

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