第27話 『ゴリラと戦ってみた!!』 ~会った事もない魔王を迷わずゴリラと呼ぶ。そんなバロス・チョロス・ロリ。~
ぼったくり店にもまともな商品が2割程度は置いてある。
この道20年のでぇベテランな店主は語る。
「そりゃ全部が全部ゴミだったら目利きじゃなくても気付くからね」と。
そんなまともな商品も合わせて全部バロス・チョロス・ロリに奪われた、もとい、正当に所有権を譲渡した店主はうな垂れつつ、魔法少女に連れられて角の露店へ向かったところ。
店にはエリリカとセフィリアが残っている。
「どうしよう!! セフィリアさん! あたしに似合う服、鑑定して! 鑑定!!」
「それならお任せです! 出ました! それですね!」
「白いミニスカートだよ? これ、あたしが前に穿いてたヤツとほとんど変わらないよ? これじゃ、エリリカ・バージョンアップにならないよ?」
「エリリカさん。あのスカートはマスラオ様との思い出の品でしょう? 似た感じのものがあればそれを選ぶのがエリリカさんにとって一番だと思います!!」
「セフィリアさぁん……!! じゃあこれにします!!」
「あ! ちゃんとプリーツスカートにしてくださいね! フレアスカートだとわたくしと被るので!! マロリさんとは何が被っても問題ないですけど!!」
エリリカが再びミニスカートをゲットした。
ついでにぼったくり店の中でもぼったくれない商品を漁りつつ、装備を整える。
元のフィジカルによる防御力があるセフィリアと魔装によって頑丈さを手に入れられるマロリの2名とは違い、エリリカは元が村娘なのでしっかりと防具を着せておかないとちょっと攻撃がかすっただけで致命傷になりかねない。
セフィリアの鑑定ではなく、ただのオシャレアドバイスで村娘の装備も新調された。
白と銀のロングブーツでインナータイツのみだった下半身のガードを固める。
「でもでも! これじゃ露出が!!」
「安心してください! ちゃんとスカートが捲れます!!」
武器はホゲーおじさんに借りっぱなしの剣を持参しているので、胸当てを鉄製のものからモンスターの外皮を加工したものへとグレードアップさせる。
「でもでも! これじゃおっぱいが!!」
「安心してください! わたくしの方が揺れるので心配無用です!! ただ、エリリカさんは胸当てを吹き飛ばされてからの差分が生まれるので!! ここは差別化可能です!!」
こうして、村娘観光モードのエリリカが勇者仕様に。
「うーす。ンビューの丸焼き買ってきたっすよー。おっさんが親切なんで、1人串焼き2本も買ってくれたっすわー。うまー!!」
「へ、へへっ。じゃあ、もうおじさんは行きますんで……」
「あ! ダメです!!」
「まさかこの中で1番無害だった田舎娘に止められただと!? もう何も出ねぇよ!?」
「そうっすよ。このおっさんからはあと奪うなら預金くらいのもんっすよ? 奪うっすか?」
「出ました!! マロリさん! この方、結構な額を貯めておられますよ!!」
マロリが悪い顔をして指をポキポキと鳴らす。
それを止めたのもやはりエリリカ。
「このおじさんを連れてお城に行こう!! それで、悪い人を連れて来ましたって言って! 流れで魔王を勇者配信で殺すっていうのはどうかな!!」
「笑顔で何言ってんすか、この子。そうだったっすね。マスラオおっさんの娘だったんすね。あ゛。やべっ。ウチ、そろそろ変身解かねぇとキツいっす」
方針が決定された。
路地裏に駆けこんで行く魔法少女はそれなりに注目を集めたが、「マロリさんはおトイレを我慢していたんです! 許してあげてください!! さすがにそれを撮ったら人として軽蔑されますよ!! わたくしはしませんけど!!」というセフィリアによるファインプレーによって変身解除は無事に行われた。
戻って来る道中で「間に合ったかい?」「知らない土地じゃあるある」「気にしなさんな。掃除はおばちゃんたちがするからね」と地元のご婦人たちに優しい声をかけられて、マロリが精神的ダメージを負っていたのは内緒のお話。
◆◇◆◇◆◇◆◇
やって来たのはチャー城。
「ごめんくーださい!!」
「いや……。元気なんすよ、あんたは。今から下剋上キメるんすよ?」
「出ました! むしろ田舎者感が出ていて警戒感が消え失せるみたいです!!」
鑑定士の言う通り。
チャー城に入ってすぐにエビの頭がチャームポイントの魔獣がやって来て、「ああ。犯罪者の検挙にご協力を? 助かりますねー。こちらが……あー。無許可で粗悪な品を。下手こいた方ですか。上手くやりなさいよ、まったく。検挙されたらこっちも仕事しなくちゃいけないんだから。はー。誰かー。留置場にぶち込んどいてー!!」と、仕事を雑な感じでこなしてくれたため3人娘は難なく受付までやって来た。
普段ならば別に誰憚る事なく受付にて「魔王ぶっ殺しに来ました!!」と宣言すれば良いのだが、今回は既にどこかのガイコツが「ヤメるのだよ。マジで」と警告済みなため、普通に入城していたらさすがに魔王メスゴリラーンにも気付かれていた。
「出てました!!」
「はいはい。あんたは商品鑑定させてなきゃ優秀っすよ」
事前の鑑定は鑑定士の基本。
もっと基本の物品鑑定ができないので、せめてこの基本くらいは死守したいとセフィリアが仕事済み。
「何故かわたくしたちの素性がバレてますね!!」と情報をこちらも得ているので、ぼったくり店主を生贄にカムフラージュをゲット。
受付にたどり着く。
「すみません!」
「ああ。報奨金ですか? うちのハァァンは結構渋いですよー。いくらだったかな。ちょいとお待ちくださいねっと」
「あたしたち! 勇者です!!」
「えっ。冗談ではなくて? ここ、チャー・ハァァンですけど?」
「ゴリラと戦いに来ました!!」
「あばばばばは!! えらいこっちゃ!! この城でメスゴリラーン様の事をゴリラ呼びするのはマジの人だわ!! おい! 闘技場の用意!! あとゴリラにはまだ言うなよ! ゴリラ、ゴリラって呼ばれるとキレるから!! 良いか、絶対にゴリラに報告すんのは最後だからな!!」
エリリカの応対をしたエビの人が数分後に謎の死を遂げるのだが、その原因は本当に謎であった。
エビ頭に代わって、カニ型の魔獣が闘技場までの道案内を務める。
務めたら挨拶もせずにカニらしくない全力直進で走り去っていった。
ピンク色の扉の前に、バロス・チョロス・ロリが立つ。
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