エピソード20

「ダイヤルはラジオの周波数1372の番号でかけろ。無線の相手がランダムで4桁の番号を話したら五分以内にその番号で無線を繋げ」

「この通りにある地下に続く道はあるか。マンホールの数が多くても、ある程度は把握しているのだろう?レジスタンスとはそういうものだからな」

「ううん、一番使いやすいと言われているのが近くにある。手前のカフェと奥のバー。その隣の骨董屋の二階は宿になっている。ニル殿がいたホテルと同じで外国人が多く滞在することが多いと言われているな。裏口を抜ければゴミ置き場の集まる通路にマンホールがある。そこから地下集合住宅に抜けることができる」

遠くの方から聞こえる歓声が大きく響き渡った。煉瓦造りとコンクリート造りの建物が混在している向かいの通りには「オアシス」カフェと「ドランクストーン」バーが見えた。そして「セカンドハンド・バイ、ナウ!」骨董店の二階を睨んだ。窓の奥に人影が見える。先手を打つべきだろうか。できれば王子の顔よりも王が仕向けた霊体が現れる瞬間を拝みたいところではあるのだが。

「王子の護衛に伝えてほしい。可能なら進行方向右に警戒しろ。狙撃手がいるかもしれない、というのは嘘だがそう伝えてくれ。あの骨董店の2階に何かがありそうだ。俺は骨董店の中に入ってみる。メイス軍曹は襲撃に備えて王子たちの逃走経路を確保してほしい。俺の泊まっているホテルでもなんでもいいから王子たちが逃げるプランを考えてくれ」

メイス軍曹の表情にシワだらけの陰が戻った。

「一体霊体がどうやって王子を殺すんだ?王子の護衛には精鋭騎士団がついているんだぞ。レジスタンスの俺たちにはチャンスになるかもしれないが、これまでないことが今日起こるとでもいうのか」

「運命というのは日頃の積み重ねと行いが手繰り寄せる現在のことをいう。君たちがこの国を変えようと懸命に努力していることと同じようにポールドのエクソシストたちも王子を殺害するために準備をしてきた、としたらどうする。何かが起きるかもしれないじゃないか」

「俺たちにもあちら側にも同様のチャンスがあるというわけだ。わかったそのつもりで準備をしようじゃないか。だがニル殿に残念な知らせがある。」

「なんだ?ホテル側の向こう側にも通り道があるだろう」

「この大通りを横切って向こうに行くことはできない。見てみろ誰も通りを横切ったりしていないだろう。こればっかりは特別扱いしてやれないね」

それもそうか。では骨董店の向かい側で待機することにしよう。ヴェール香と銀弾は余分にある。葬送香とカモフレグランス(死香)は使う余裕はないだろう。そんな予感がした。

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