第2話 自習室

 それにしても。


 あたしは寮に来たのははじめてなので、なんだか落ち着かない。

 すべて二人部屋で、個室はなし。

 基本的に同じ学年で同室になる。例外もある。

 自習の時間は、必ず自習室に集まること。


「ここで必ず勉強するんだあ」


 自習室には仕切りのついた机がいくつも並んでいる。

 今はあたしたちが思い思いの席に座っている。


「壁が防音だからね」


 食事は決まった時間に食堂で。

 今日みたいに休日で食堂がお休みの時は、給湯室で簡単な料理ができる。

 お風呂の時間は決まっていて、逃すと入りそびれる。


「お風呂が一番厳しいなあ」

「はは、通学生は、ひ弱だねえ」


 北さん、おばあちゃんみたいな話し方で言った。 


「決まりごと、苦手だしさあ。それに、それだけじゃないでしょ?」


 噂には聞いていたんだけどさ。


「〈入寮式〉って、ほんとにあるの?」


 新入の寮生に上級生たちから課せられる、試練。

 大体肝試し的なことをさせられ、それで寮の間取りを覚えたり、そういう軽いレクリエーションらしいんだけど。


「ええ。その話をしようと思ってお呼びつけしたんですよ、田谷さん」


 滝川さんが、いつもの物静かな言い方で。


「え? あたし、面白いとこに帰ってきた?」


 矢口が部屋に荷物を置いて、また割り込んできた。

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