第4話

「ピノね、いっぱい考えた。メルロがピノのこと大事にしてくれたから、メルロが言ったこと、この1年いっぱい考えたの。メルロ、言ってたんだ。すぐるにも幸せになって欲しいけど、ピノにも幸せになって欲しいって。ピノはもう、苦しまなくていいんだよ、ラクになっていいんだよって。それで、はなの事も幸せにしてあげてって。それが出来るのは、世界でピノ1人しかいないんだよって」


 まるで子供のように涙を流すピノに、僕はそっとハンカチを差し出した。

 真っ黒なタオル地のハンカチ。

 それを見たピノは、嬉しそうな表情を浮かべた。


「ピノね、黒が大好きなの。だからピノは夜担よるたんになったの。だけど華は白が大好きなの。だから、服が白ばっかり。でも、華には黒より白の方が似合うと思う。華は本当にいい子だから。華は白過ぎるから心配で、だからピノは華から離れられなかったの。だけど、違うのかな。華は自分で少しずつ、黒にも馴れていかないといけないのかな」


 僕のハンカチで涙を拭ったピノは、ニッコリと笑って僕に言った。


「ねぇ、ピノがいなくなったら、優が華の事支えてくれる?」

「えぇっ⁉」


 突然のお願いに、僕は大げさでなく仰け反ってしまった。

 メルロとピノは確かに仲が良かったのかもしれない。ピノは彼女だと言っていたし。

 だけど僕は、ピノとは今日が初対面だし、華という人にはまだ出会ってもいないのに。


「大丈夫だよ。メルロだってきっとそう思ってる。だからメルロは今日ここで優を華に会わせようとしたんだと思うよ。ピノにも1年間考える時間をくれて」

「そう、かなぁ……」

「メルロとピノが保証してるんだから大丈夫!お願い、うん、って言って。じゃないとピノ、いつまでも華の側から離れられない……こんなんじゃ、大好きなメルロに嫌われちゃうから……」


 ウルウルとした瞳で懇願されると、僕も弱い。

 それに、メルロが僕を華に会わせたかったんだとしたら、それはもう、メルロの太鼓判を貰ったようなものだ。


 うん、と小さく頷くと、ピノはその場でピョンピョンと飛び跳ねて喜んだ。


「じゃあ、ピノも華にクリスマスのプレゼントをあげる!華がこの綺麗な星空を見られるように!だからピノもメルロと同じく華にバイバイする。ねぇ、優。華が目を覚ましたら、一緒に星空眺めてあげてね。華ね、綺麗な星空が見たいなぁって、言ってたんだ」

「もちろんだよ」


 僕の返事に安心したように頷くと、ピノはその場で瞼を閉じた。

 バイバイ、とでもいうように、右手を小さく振りながら。

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