第8話 ミステリー研究会は?


 同年六月二日、ミステリー研究会の部室では、皆の意見を聞くために、帆蟻ほあり部長が全員を集めて話し合いを始めた。

「ええと、全員集まったかな? 点呼するぞ、先ず一年生の垰田春樹たおだはるき君、高遠愛梨たかとうあいりさん、二年生の巨勢勇樹こせゆうき君、山地光希やまじみつき君、三年生の佐伯真梨子さえきまりこさん、髙梨由里子たかなしゆりこさん、吉田祐よしだたすく君、あとは、四年の俺帆蟻と、蓮英一れんえいいちと、桜庭総一郎さくらばそういちろうの以上十名だな」名前を呼ばれた部員はそれぞれ、「はい」と、返事をした。

 そして帆蟻部長は、今日みんなに集まって貰った説明を始めた。部長は、先日の高倉華英たかくらはなえさんが話した事情をかい摘まんで、話をした。

「え……。つまり帆蟻部長の話とは彼女である、高倉さんの相談事に応えてあげようと言うことですか。チョッとそれは……。それにこの研究会を私物化するのはどうかと思いますが……」皆も垰田君の言葉に軽く頷いていた。

「な、何だよ皆❗ 女性が困っているのを助けてあげようとは思わないのか」

「女性って、結局部長が彼女に良い顔をしたいだけじゃないすか」

「そうか、判ったよ。皆、気にくわないんだな」帆蟻部長は、顔を赤くして大声を上げた。そこに、頬杖をついて話を聞いていた巨勢君が言った。

「帆蟻部長! 何もそんなに興奮することじゃないと思いますが。私も高倉華英さんの話の中には腑に落ちないことがあります」

「腑に落ちない? どんなところがだ」部長の呼吸が少し荒くなってきた。

「そうですね~、何故に彼女はあんなにも、土御門つちごもんおじさんの宗教の事とか野望の事までよく知っているのか? おかしいと思いませんか。そんなこと人に話すようなことではありませんよ。まぁ、おそらく高倉家の皆は、その宗教である『天体のこころ』の一員であることは判るけどそこまで、詳しく知っているものなのかな? 更に私は思うんですけど何故にミステリー研究会に助けを求めるのか? 自分の所属のオカルト研究会の皆さんに、助けを求めるのが普通なのではないですか」

「そ、それはだな。判るだろ。察しろよ。高倉華英さんの彼氏は誰だか判るよな。その信頼の厚い人に頼るのは人の常ではないのかい。そのくらい忖度そんたくしろよ」真っ赤な顔をして釈明した。

「そんなに帆蟻部長に、信頼を置いているのかしら? 私には判んな~い」高橋由里子が混ぜ返す。

「大事なことを忘れてましたが、かんじんの華英さんの祖父、高倉正剛たかくらせいごうさんの喜寿のパーティーは、何時なのでしょう?」頬杖をついたまま、巨勢君が質問した。

「彼女の話だと、丁度夏休み中の八月十五日らしい」

「するとその前に、現地に行かなくてはならないと言うことですね。それとこれは今朝テレビのニュースで見たのですが、何でも例の東京湾で見つかった遺体の身元が判明しましたね。問題はその身元が長野公安調査事務所の調査員と言うことですよ。これはただ事ではないと私には感じるのですがね。正直、この時期に長野にいくのは、危険ではないでしょうか?」すると皆も”そうですよ~“との意見が飛び出した。

「俺だって新聞で読んだよ。しかし、彼女の実家とは関係があると出ていた訳ではないぞ。まぁ、そう言うことだな~」しかし、そこで二年生の山地光希が発言した。

「俺。タブレットで検索したんですよね。今度発見された方の公安調査事務所と倉橋さんの家は、近いんですよね。更に彼女のおじさんの宗教も近くにあるし。公安調査庁って、テロ事件などを起こしそうな、宗教団体や、その他の団体等を調査するところでしょ。何だかヤバイな~と、思いますけど」更に今度は巨勢君が発言した。

「そうさ、法務省公安調査庁と言う部署は、そんな調査を行うんだよ。もう三十年ほど昔になるかな、オウム心理教の時、活躍したって親父から聞いたよ」

研究会の皆は”ふ~ん“と、ため息に近い反応をした。しかし、その時吉田祐は、

「へ~、そんな場所なのか。面白そうだな。チョッとばかり興味が出てきたよ」と呟いた。

「面白いどころじゃないだろ。危険な場所じゃないか」と、誰ともなく批判の声が聞こえてきた。

「ええい、皆❗ 結局はこの案に反対なのか、賛成なのか、ハッキリしろよ」帆蟻部長の大声がとんだ。

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