第4話 冒険者が戻って来た!

 地下水道の作戦はすぐに終わった。作戦開始したその日の夕方ごろにテレジアとシンがギルドに戻って来た。金髪のゆるふわシスターのテレジアと黒髪を二つ結びにしている金色の瞳を持つ最年少のシン。


「二人ともお疲れ様」


 いつものように労いの言葉を送る。テレジアが慌てるように否定する。


「私達は前線にいたわけではないので、大した疲労感はございませんよ」


 テレジアは癒し手として非常に優秀だ。小さい労力だとしても、貢献度は相当高い。浄化の魔法を扱える人材はいつだって少ないのだから、いるだけで大助かりというのが現状だ。


「いや。あなたがいたからこそ、前線にいる人達が力を発揮できますし、万が一の時でも対応しやすくなるんですよ」


 テレジアがなるほどと小さい声で言って、納得していた。需要どうこうは実際に外で仕事しないと分からないものだ。少しずつ学習できたら良いなと思う。さてと。視線を小さいシンに移す。


「シンちゃん。よく頑張ったな」


 最年少の仲間で、ついつい頭を撫でたくなるのだが、こういう時に限って嫌がる。


「別に。仕事だし。それに」


 何故かシンちゃんが不機嫌になった。まさか。


「爺、使い魔飛ばして見てた」


 やはりシンちゃんの祖父は使い魔を飛ばしていた。よほど心配であることぐらい、分からなくもないのだが。


「テレジアはそれに気付いてたりは」


 恐る恐るテレジアに質問を出してみた。果たしてどう反応するか。


「シンちゃんに言われるまで……気付いてませんでした。周りの皆さんも」


 困った笑顔で答えていた。孫をこっそり見守るために、高度な魔法を使うおじいちゃんはあなたぐらいだ。大魔法使いニコラ。


「ああ。思い出しました。これ。今回のレポートです」


 テレジアから二人分のレポートを受け取る。じっくり見て、気になるところがあったら、王国に聞いておこう。


「それでは私達はこれで失礼します」


 テレジアとシンちゃんはギルドの建物から出た。それと同時にレインが裏の入り口から入って来た。


「ただいま帰りました! どうやら上手くいったようっすね」


 レインは王都に行っていた。知り合いの騎士と酒を飲んだり、服飾職人とデザインの話し合いをしたり、魔法に関するおバカな企画を考案したりなど、冒険者ギルドに関係のない用事を全て済ませてきたのだ。その途中で作戦のことを聞いたのだろう。移動手段については空間転移でどうにかしたと考えるしかない。


「ああ。こうして二人が戻って来たからな。王都はどうだった。様子は」


 様子を知っておきたい。だからこそ、俺は訊ねた。レインは顎を右拳に乗せて答える。


「そうっすね。地下水道の入り口のホールは騎士がいて、入らないように結界があったっす。それに周辺住民に退避勧告が出されてたっすよ。まあ被害が表に出てなかったっすけど。こういうのは結果論すから」


 王都に被害が出ていないだけマシだと考えた方がいいだろう。細かいところは恐らく調査中で、末端の俺達が知るまで当分かかる。とはいえ、とりあえず俺達がやるべきことは彼女達のレポートを読むことからだろう。


「よし。読もうか」

「はいっす。多分シンちゃんのは修正いるっすよ」


 シンは幼いながらも、大魔法使いから教わっているため、とんでもなく強い。ただ年相応に文章を書く力がない。大魔法使いニコラの力を借りて、レポートになるレベルだ。色々と頑張ろう。大人として。

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