実録!オヤジ狩り~未成年に狩られた25歳童貞の純情~

44年の童貞地獄

女子高生と知り合った陰キャ青年


1999年(平成11年)、24歳だった私が某家電メーカーの工場で派遣工をしていた時のことだ。


今でも鮮明に覚えている事件が起きた。


これからその話をしようと思うのだが、興味があったら聞いて欲しい。


当時私は大学卒業後に就職した会社を一年とちょっとで追われた。


時は就職氷河期の真っただ中、まともな職が見つからずに致し方なく一時の糊口をしのぐために派遣工になったのだが、その職場には時代を反映して当時の私と同世代の者が意外と多かった。


就職できなかったか、私と同じく会社からドロップアウトしてしまった若者たちである。


そんな中に堀川という青年がいた。


堀川は私と同じラインで働いているから顔見知りだが、話したことはない。


私が職場で口を利くようになった人間の一人に増田という男がいたのだが、その増田が堀川とよく話す仲だった。


奇しくも堀川は増田の小中学校の同級生で、昔馴染みだったのだ。


つまり増田と同い年だった私とも学年は同じだった(私は早生まれなので彼らの方が歳は一つ上)。


増田によると堀川はある専門学校を中退後、また別の専門学校へ入り直して卒業してから就職したが、一か月未満で辞めてからこの工場で働いているという少々ダメ人間だ。


堀川の見かけもなかなかで、大人しそうというか気弱でネクラそうで、ボケーとした感じの顔の青年である。


長めの寝ぐせを整え切れていない不潔そうな髪型、170cmくらいの細身だが運動不足で体脂肪率が高めであろうガリポチャ体型、私服のセンスも悪い。


その外見からも、活舌が悪くモゾモゾと何を言っているかわからないしゃべり方から判断しても女性には絶対にモテそうにない感じの男だった。


私も似たようなもんだったが。


だが10月中旬の金曜日、その堀川が大変身を遂げて職場にやって来た。


長めの髪を金髪に近いような茶髪に染め、耳と鼻にピアス、目には青いカラコン。


上下は作業着に着替えていたのでどんな私服を着て来たのかわからなかったが、首から上だけでも十分インパクト大の変わりっぷりだった。


一体何があった?


決まってる、女だろう。


果たしてやっぱりその通りで、今晩ある女性と会う約束をしているとかで、そのためのイメチェンだった。


「どうしたんだその恰好?」と増田らが聞くと、堀川は待ってましたとばかりに喋る喋る。


何でもテレクラ(1999年当時は携帯の出会い系サイトも出始めていたが、テレクラも健在だった)で知り合ったらしく、しかも相手は女子高生だというではないか。


当時女子高生は『コギャル』と呼ばれて世のいい歳こいた男どもにもてはやされていた時代。


だから堀川は普段と違ってもう有頂天という感じで、相手は女子高生であることを特に強調していた。


増田たちは「援助交際だろう」とか「本当に女子高生か」とからかったら、もうすでに一回だけ会っており、今回は二回目で本格的なデートだという。


たったその程度なのに喋っているうちに堀川は相手のことを「俺のオンナ」とか「カノジョ」とか言い始め、もうすっかり交際しているつもりになっている。


それをツッコまれると、「俺のことを気に入ったって向こうは言ってんだ!」とムキになった。


「おいおい、ヤバくねえか?」「おっかない奴出て来るぞ」と、みんな懸念を表明したが堀川は聞く耳を持たない。


それどころか「俺ってマジで何歳に見える?高校生くらいに見えなくね?」とかワケわからんことを言い出している。


「25歳には見えない」と言われたらしく、いい歳こいて喋り方までそれっぽく変えて。


2525という意味じゃないのか、それは?


私も端から聞いてて、どう見てもヤバいような気がしていた。


だって堀川はネクラで地味な青年で、喋りがド下手くそなコミュ障。


年上の男に魅力を感じると相手は言っていたと彼は主張するが、イメチェンしたとはいえ小学生のまま25歳になったような感じ見え見えの堀川に、高校生くらいの背伸びした女の子が寄ってきそうな大人の魅力があるようにも思えない。


援助交際じゃないとしたら、相手の女子高生とやらには何か危険な目的があるんじゃないか?


第一、彼のイメチェンは私から見ても無理してる感が強く、痛々しい。


今までファッションに全く気を配ってこなかった者が急にシャレっ気を出した場合特有のズレを感じる。


染めた髪だってムラがあるし、相変わらず寝グセ立ってて変な髪型のままだし、ピアスの位置もおかしい。


何より青いカラコンが彼ののっぺりしたバカ面に似合わなさすぎる。


それにいい歳こいて、そのガキみたいなファッションは何だ?


などなど心の中でツッコミを入れつつ、実は自分と同じくらいネクラそうな奴がまんまと女と会うことができたことに対する嫉妬が混じっていたのも事実だ。


もうすでに一回会っているって言ってるし、もし堀川の話が本当だったら私もテレクラ行ってみようかな、ともちょっと思ったりもした。


作業が始まっても堀川ははしゃぎっぱなしで、隣の奴にあれこれ話しかけてる。


聞こえてきたのは「どのラブホテルが一番おすすめ?」だ。


さっきから聞いてりゃ気が早すぎだろう、今回も約束どおり相手が来るとも限んないんだぞ。


などと横目で聞き耳を立てていたら、「おい!横見て作業するな!」、などと現場監督に怒鳴られたのはおしゃべりしていた堀川ではなく、なぜかそれを見ていた私の方で、何とも釈然としない。


こうしてその日の作業が終わり、午後5時の終業時間になるや、堀川は踊るようにタイムレコーダーに向かって行った。


さぞかし期待で胸と下半身を膨らましていたことだろう。


それが、彼を見た最後だった。


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