夕霧の疑惑~源氏物語異文~
善根 紅果
父の妻
六条院・南殿の
声作りしたところで、全く似ないだろうけれど。
私は、声も、顔も、姿も、
私が内に入って行くと、妻戸が閉められて、暗闇の中、鈴虫の声に交じって、
そして、何かを引きずる音がして――……
南殿に、
歩き出した私は、
私は奥の
「そんなことができるわけがない」と、心の内で否定していたことは、これほど
ここに、
――
この世に
知られれば、この世に生きていることはできない――
私は、ためらうこともなく、
私が膝を
「
鈴虫の声の中、私の耳には
初めて聞いた声は、確かに女の声なのに、
「なぜ、」
思わず言ってしまって、私は
でも、私は今の今まで、声を発していない。なぜ、私だと分かったのか。
「内にいると、
思いついた私に、彼女は全くちがうことを言った。
暗闇に見えなくても、一度だけ、
春の
彼女は
もう私だと、彼女に知れているならば、
「私だと知りながら、逃げもせず、迎えたのは、なぜですか」
ささめきながら(ひそひそ言いながら)、私は手探りして、
「さきほど、聞きましたでしょう。――こんな夜中に、こんな所にいらっしゃって、どうしたのですか」
私の手に、ようやく
「
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