相川大翔6
俺は、最近の変化について、何があったのか母さんに言ってないし、母さんも何も聞いてこない。
一つだけ話したことといえば、「キーボードが欲しい」と母さんに言った時くらいだった。
母さんは、不思議そうな顔をしながらも、笑って承諾してくれた。
本当に良い家族を持ったと思う。
俺が前向きに生きていくことを一番サポートしてくれていたのは、きっとこの母さんの何も聞かずに見守るやさしさだったのだろう。
そして、俺には一つ、目標ができていた。
高校に行くこと
今までの三か月間学校に行かず、その上今から行く気もない俺には大きすぎる目標だということは十分すぎるほどわかっていた。
それでも俺は、高校を受験して、通いたいと本気で思っていた。
そこにはもちろん、バンドがやりたいという明確な理由がある。
あれからいろいろ調べて、バンドをやるための仲間を集めるには学校に行くのが一番手っ取り早いという結論に至った。
特に俺のような何の人脈もない人間には、新しく人脈を作る以外方法がなかった。
このことはまだ母さんにも言っていない。
もう少し、可能だと思ってもらえるようになってからきちんと話すつもりだった。
そのためにも、勉強はそれなりにやっているつもりだ。
少なくとも、今までで一番と言えるくらいには、頑張っていた。
その成果もあって、この間こっそり受けた模試では、一万人中一一五三番を取ることができた。
決して良いとは言えない順位だが、ほとんどゼロの状態から始めたことを思えば上出来だと思う。
俺の目指している高校は、とりあえずバンドができる中でも一番レベルが下のところにしているが、本当に行きたいところは、家の近くでは最難関のところだった。
その高校は部活も充実していて、バンドができる軽音楽部にも学生にはもったいないほどの設備と資金があった。
もちろんそんなところに行けないことはわかっているが、目標は高く、ということでモチベーション程度に思っていた。
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