もしも呪いの人形に好かれたら

カラスヤマ

第1話

ど田舎から都会に引っ越して、半年が過ぎた。人の多さやビルの高さは想像の範囲内だった。電車がすぐに来たり、夜が明るいのも「まぁ……こんなもんだよな。都会だし」とすぐに慣れた。



『ーーー連続殺人犯、口美 レイア(くちび れいあ)受刑者が◯◯刑務所から脱獄しました。付近の住人の皆様は、絶対に。絶対に!! 外に出ないようお願いします。繰り返します。大変危険な凶悪犯が脱獄し、現在も逃走中です』


「へぇー……こっわ~……」


つまらないテレビのニュースを消し、準備体操を始める。


大学に入ってからは弁当飯が多いせいか、多少腹回りがプヨプヨしてきた今日この頃。

手遅れになる前に近所の公園周辺をジョギングすることを決めた。


そのジョギング初日。久しぶりの運動ですぐにバテた俺は、公園のベンチに寄りかかり小休止。するとどこからか変な声が聞こえてきた。それは、喘ぐような声でもあり、少しだけ興味がわいた俺は、声がする方に忍び足で近づいた。


草むらを静かに掻き分ける。するとそこには小さな木箱があり、薄汚れた日本人形がなぜか体育座りで座っていた。


「………………」


「……あ~…………あ~…」


「っ!?」


人形がハッキリと俺の顔を見て、あ~あ~言っている。元のように草を丁寧に戻し、再び歩き出す。


公園を出て、数分後。


「いやいやいやいや! さすがにあり得ないだろ。都会だからとか関係ないし」


何かの間違いだろうと公園に戻り、先程と同じように恐る恐る草を掻き分けた。


「あ~……あ~……あ!」


気持ち悪っ!!


ってか、これ何? 人形?


ドッキリか? 誰かに撮影……見られ………てはないみたいだけど。


「あ~…あ~………」


喋る玩具にしては、妙にリアルでとてつもなく気持ちが悪い。今も小さな手を己の喉にちょんちょん当て、何かを俺に訴えかけてくる。必死さを感じた。


もしかしてーーー。


「喉が痛い? 異物が詰まってる?」


「…………………」


ブンブンと小さな首がもげそうな勢いで左右に振る。


「じゃあ……んっ……喉が乾いてるとか?」


「あ、あ、あ~~!!」


激しく首を上下する。

仕方ないので自販機で買ったお茶を口を開けた人形に少しずつ分け与えた。


なんだ、この状況?


しばらくして落ち着いた様子の人形が流暢に話始めた。


「あ~…ああ!………んー………はぁ~生き返ったぁ」


「………………」


「どうした?」


「…………………………」


ダッ!!


俺はこれ以上この怪現象に関わらないように公園から全力で逃げた。


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