時代②

「ああ!王子様!どこへ行くのですか!?」


 ある晩、男が風呂からあがると、リビングで娘が台本のような物を読み上げていた。


「どうしたんだ?」

「あ、うん。今ね、今度学校でやる劇の練習をしてたの」


 娘は気恥ずかしそうに答える。


「私、王女様役なんだけどね?同じ王女様役の友達みたいにうまくできないんだ………」

「ん?王女様が二人いるのか?」

「二人だけじゃないよ?王女様役も王子様役もみんなやりたいって言うから」

「ほ~。今の劇はそんなんなってるのか」


 きっと親御さんから、子供の配役について意見でもあったのだろう。男はそんな事を考えながら腕組みをし、それから娘の頭をくしゃくしゃと撫でた。


「よし!じゃあ俺が練習を手伝ってやろう!」

「ほんと!?じゃあ私は王女様Cの役だからパパは王女様AとB、あと王女様DからP。それに王子様AからQの役をやってね!」

「……時代、か」

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