青春は体育祭

第16話

「はい、じゃあ出場種目はこれで決定で。」


森田くんの言葉に合わせて、

黒板に書かれた名前に赤い丸をつける。


体育祭が3週間後に迫った今日。

ホームルームの時間を使って行われたのは出場種目決め。


「さっちゃんやっぱ引っ張りだこだったね。」


1人2種目までの出場と決まっている体育祭。

総合優勝を目指すには出場種目の振り分けも重要ポイントで。


我がクラスは陸上部エースのさっちゃん、野球部の森田くん、サッカー部塚田くんら運動部メンバーをどう振り分けるかがポイントとなっていた。


「よっしゃお前ら優勝目指そうぜ!優勝したら・・・」

「「お?お?」」

「全員のファミレスのドリンクバー代出してやる!!」


はい、花ちゃんはやっぱりケチでした。

その言葉にクラスメイトからブーイングが起きて、

今度は「やっきにく!!」という声が飛び出す。


花ちゃんのおごりで焼き肉かあ。

上手い飯が食えそうだぜ。


「皆の期待にそえるかはわからないけどねえ。」

「またまた~」


こうやってさっちゃんは謙遜してみせるけど、

さっちゃんがスポーツで活躍していない所は今まで見た事がなくて。


「少しくらい私に分けてくれたっていいのに。」

「なに身長のこと?あ、ごめん運動神経か。」

「ダブルで抉るのやめてもらっていい???」


ごめんごめん、と1ミリも思ってなさそうな口調で謝ってじゃあまた明日、と部活へ急ぐ。


私も手を振って帰ろうと思ったが、

いけない、今日は体育祭の実行委員会があるんだった。


はあ、とため息が出そうになるのをこらえる。


実行委員に決まったあの地獄の日から今日まで。既にやる事はたくさんある。

これからは当日の為の準備も増えるのだ、また忙しくなるなあ。嫌だなあ。

ああなんかあの日の花ちゃんの顔思い出してムカついてきた。今度イスに両面テープでも貼っとこう。


「悪い秋山。俺今日委員会行けそうになくて…。」

「いいよ全然。部活頑張ってね。」

「ほんとごめんな。さんきゅー!」


森田くんは申し訳なさそうに両手を合わせて、

焦った様子で教室を出ていく。


同じ実行委員である森田くんが所属する野球部は、先生が厳しいことで有名で。

そのためなかなか委員会にも出れないことが多い。


部活もあり、そして体育祭で活躍を期待される選手の1人でもある。

…忙しいんだろうなあ、大変だ。


はい。対照的にわたくし体育祭での期待値ゼロの秋山結衣です。

こういう所の為の人員です。


ガラガラガラ、と委員会の会場である教室のドアを開ければ、

そこには既に数人の委員がいて。


1番端っこの窓際の席に座って、

涼しい風を受けながら全員が揃うのを待った。

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