第13話

「じゃあね実行委員、また明日。」

「実行委員、日誌書くの頑張って。」

「おお体育祭実行委員。気をつけて帰れよ~。」


「とりあえず一回ずつデコピンでもいいですか?」


放課後、日直のため日誌を書いている私の背中に声がかかる。

ちなみにさっちゃん、塚田くん、花ちゃんの順。

煽りすぎじゃない皆、私泣くよ?


次々と教室から人が減っていく中、

日誌を書き終えた私は、集めた提出ノートと共に日誌を運んで。


カバンを取りに教室に戻ろうと廊下を歩いていれば、

先ほどまで騒がしかった校内は静かになっていた。

・・騒がしかった教室が静かになったこの時間、

なんとなく好きだなあ。


なんて思って教室に足を踏み入れようとすれば

視界に誰かの制服が映る。


あれ?誰かいる?


誰か忘れ物でもしたのかな、なんて特に深く考えずにドアを開く。

その音に、中にいた誰かはとても驚いて。


「・・っ!」

「えっ!!」


あまりの驚きように私も驚いてしまった。

いや、驚いた理由はそれだけじゃなくて。


「・・須藤先輩?」


そこにいたのは同じクラスの生徒でも同じ学年の生徒でもなくて。

この学校の生徒会長、須藤先輩。

・・よかったやっと名前を覚えられた、じゃなくて。


「・・そこ、さっちゃんの机・・」


会長がいたのはさっちゃんの机の前。

そしてその手には、

よく分からない緑の物体が描かれた、シャープペンシル。


「まっ!これは!違くて!!」


私を見て驚いたまま固まっていた会長だが、

私の言葉に焦ったようにそう言った直後、教室の前のドアから走り出す。


「えっ!ちょっと!え!!」


まって、情報量多すぎて秋山パニック状態です。

それでもとりあえず追いかけなきゃ!と私も教室を飛び出す。

・・・が、当然の事ながら。


「っ・・疲れた・・!」


運動音痴の上運動不足の私。

当然会長に追いつけるわけもなく、

その距離はどんどん開いていく。


どうしよう、どうするのが正解だろう、

と思いつつとりあえずは走り続けていたのだが。


走るのに一生懸命な私、

足元にあった廊下のゴミ箱をよけられず。

あっ、と思った時には時すでに遅し。

・・・こういう時って景色がスローモーションになるよね。


ベチン、と間抜けな音を出して

膝から転んでしまった。


「・・・!!」


転んだ音が聞こえたのだろう、

私より数十メートル先にいた会長がこちらを振り向く。

あ、止まってくれるんだ。


会長は私の方を見て、正面を向いて、そしてもう一度振り返って。


「・・・だ、大丈夫か?」


まさかの戻ってきてくれた。秋山驚き。


「大丈夫です。」

「っ!でも!血が出ている!!」

「あ、ほんとだ。」

「ど、どうする!絆創膏だ!あ、でも今日お昼に転んだ生徒にあげてしまった・・・!」


会長にいわれて自分の膝を見れば、

少しだけ血がにじんでいて。

そんな小さな怪我に私以上にあたふたする会長。


・・・なんか、この人。


「そうだ!保健室からもらってくる!」

「いいですよそんな。このくらい大丈夫です。」

「何を言っている!女の子に傷跡が残ったら大変だろう!」


悪い人じゃ、ないんだろうなあ。

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