12/2 モミの木




 今は兄貴と慕ってくれるあいつは元々、俺の天敵である吸血鬼ハンターだった。

 何度も何度も死闘を繰り広げた。

 俺は生き残るために。

 あいつは任務をまっとうするために。

 いや、もしかしたら、吸血鬼に対して憎悪を抱いていたのかもしれない。

 腹の内など読めない。

 態度が一変して、兄貴と慕うようになった今も。

 隙を窺って止を刺そうとしているのかもしれない。




「おいこらばかぼく!兄貴にモミの木で攻撃するんじゃないよ!」

「うわあ!二日目にしてもう魂を一つ見つけられるなんてすごいです!」


 ムキムキマッチョに変化したあいつの魂の一部は、モミの木を一本丸々地面から引っこ抜くや、俺に向かって攻撃してきたのだ。

 あいつは涙目になって必死に止めようとして、喜色満面の死神はぴょんぴょんと飛び跳ねていた。


(まあ。あいつがどう考えていようと)


 そう易々と殺されるつもりなんて、ないけどね。


「すみませんすみません兄貴!ぼくのやんちゃな部分の魂みたいで!兄貴とすんごく遊びたいみたいで!」

「おういいぞ。どんどんこーい」

「わあ!お二方は仲がよろしいのですね!」











(2023.12.2)



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