第6話 ショッピングに行こう

 「「いただきまーす!」」


 食卓に並べられた料理の数々。

 大きな皿に盛り付けられた唐揚げ、色とりどりの野菜に各々の前に置かれたスープなど。

 これは八雲やくもさんの''家族''という言葉に触発されていつもより気合が入ってしまったので今日は結構豪華になっている。


 サクッ


 「みなとくん…。この唐揚げすっごい美味しいです…!カリッとしてるのにジュワッとしてて…えっとえっと…うう…食レポは難しいですね…。」


 「十分伝わってるから良いよ。ありがと八雲さん。やっぱり美味しいって言ってもらえるのがいっちばん嬉しいわ。」


 「そうだよおねえちゃん。私なんかお兄ちゃんの料理全部美味しいから美味しいとしか言ってないかも。」


 ニヤッとしたすいがもぐもぐと箸を進めながら八雲さんに言った。


 ちなみに二人とも既にお風呂に入ってるのでパジャマを着てるがいつのまにかお揃いのものになってた。

 あれから八雲さんの風呂事情を翠に話したら喜んで私が入ると言ったので俺の仕事が一つ減った。そん時は肩の荷がおりたよ…。

 だからここ最近は翠が何かしてきても多少は目を瞑ってやってる。


 自作の中華スープを一口ズズッと飲んで翠の方へと顔を向けた。


 「確かに翠からは具体的な味の感想って聞いた事なかったなあ……。」


 「良いじゃん!私そう言うの苦手だもん。」


 「分かりますよ、翠ちゃん。やはり私の中でも美味しいが最強で異論ないです。」


 「まあ良いけどさ。美味しいって言ってくれればそれで良いから。」


 「へへ。ほらね。」


 「おい。」


 またしばらく三人でご飯を楽しく食べていき、ようやく机に並べられたその全てを食べ終えて今は俺が皿洗いをしているところだ。が、それももう終わりそうである。


 「お兄ちゃん。」


 するとキッチンに翠がやってきた。

 俺は知ってる。

 普段は何も手伝わない翠がこう言う時は大体何か頼み事があって建前上、手伝うふりをしにくるのを。

 やはりもじもじして物言いたげな表情してるので今回もそうと見てよさそうだ。


 ジャー……キュッ


 「どした?もう皿洗いなら終わるぞ?」


 濡れた手を拭きながら言う。


 「お兄ちゃんさ。八雲おねえちゃんの私服姿…見たくない?」


 「え?」


 …これは予想外の言葉だった。

 てっきり翠の事かと思ってたけど八雲さんのことなのか?


 とりあえず皿洗いも終わったとこだし翠を連れてソファに座ってテレビを見る八雲さんがいるリビングまで行く。


 「ちょっとまってて。おねえちゃんちょっと。」


 「んえ?」


 八雲さんが何が起こっているか理解する間もなく翠に連行されて部屋へと消えていった。


 「な、なんだ…?」


 ——————


 「お待たせー!」


 五分ぐらいが経ち部屋から出てきた翠と八雲さん。しかし八雲さんの服装が変わっていた。


 「こ、これは…!」


 白を基調としたシンプルなワンピース。

 膝の辺りまであるがそこから見える綺麗でほっそりとした脚がまたなんとも性癖をくすぐるというか…。

 パッと見ただけでだけでも分かるぐらいにはこのワンピース、布の質とかがすごく良いので多分お高い物だろう。


 「お兄ちゃん、素直な感想は?」


 「…めちゃくちゃ可愛いです…!」


 「ふ、二人とも…恥ずかしいですよ…!急にどうしたんですか?」


 俺と翠に見つめられ恥ずかしくなったのか顔を赤くする八雲さん。

 まさに清楚の化身そのものでその動作一つ一つが八雲さんを更なる可愛さへと昇華させていた。


 「あのね、おねえちゃんさ私服この一着しか持ってないんだって。」


 「な、なんだと!?」


 し、私服がない!?

 ならこれ以上俺たちが見れる服はこの家に存在しないのか…。なんともったいない…。


 「えっと…私普段あまり外に出ないのでこの一着で事足りるというか…そもそもこれしかなくて…ぅぅ…恥ずかしい…。」


 「お兄ちゃん、これは急を要すると思わない?」


 「…ああ。俺もそう思う。」


 八雲さんは多分、服がこれしかないのも恥ずかしいのだろう。

 しかしこの前聞いた感じだと八雲さんの家庭は少しばかり複雑そうだから無理もない。


 「そこでお兄ちゃん。明日は何曜日?」


 「え?何曜日って土曜日だけど。」


 「私は明日おねえちゃんの服を買いにショッピングに行く事を提案します!」


 ドンと胸を張って言う翠。

 確かに…中々良い案だな。


 「ショッピング…?どこへ行くのですか?」


 「おねえちゃん、ショッピングモールだよ!」


 「ショッピングモール…。単語だけは知ってますが…行ったことないです…行きたいです…!」


 八雲さんは未知の場所への期待感で目をキラキラとさせて俺の前に身を乗り出してきた。

 近い近い。今のワンピース装備の清楚モード八雲さんは破壊力が高え…。


 「良い機会だし明日三人で行く?あ、ついでに八雲さんの寝具とかも買おうよ。翠と二人だと窮屈だろ。来客用のベッドがあったからマットレスとかさ。」


 「な、窮屈とはお兄ちゃん失礼な!」


 「私は全然今のままでも良いですが…確かにあった方が便利なのも否めませんね。」


 「じゃあ決まりだな。明日はみんなで出かけよう。」


 「はい!私…すごい楽しみです!湊くんと出会ってからは毎日新しい発見があってとても楽しいですね!」


 八雲さんがとびきりの笑顔を浮かべて突然言ってきたので不意打ちをくらい少しドキッとしてしまった。でも…すごく心に染みるというか…嬉しい。


 「よし。んじゃ明日早く起きれるように今日はとっとと寝ちゃお。今8時半だからみんな10時ぐらいまでには寝るんだぞ。」


 「はーい!じゃあ八雲おねえちゃん部屋で一緒にアニメ見よー。」


 「おいおい…言ったそばから…。」


 「今日はちゃんと寝るよ!」


 翠がソファから立ち上がり部屋に戻っていくのを見ながら俺も家の戸締りして寝る準備でもしようかと思ってたら、そばにいた八雲さんが口を開いた。


 「湊くん、明日はよろしくお願いしますね!」


 再び向けられた純粋無垢な天使のような微笑み。これはちゃんと期待に応えられるように頑張らないと。


 「おう。八雲さんも早く寝なよ?」


 「分かってますよ。ですが…アニメとはあんなに面白いものなのですね…。見始めたら止まりません。」


 「…今日はちゃんとやめて寝てよ。」


 「了解です。それじゃ湊くんおやすみなさい!」


 「おやすみ。」


 バタンと八雲さんが部屋に戻ったのを確認し、ソファに腰掛ける。


 「…楽しみだなあ。」


 むしろ…毎日が楽しいのは俺の方だなこれじゃ…。よし、俺も早く寝よ。




 ☆☆あとがき☆☆


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