【カクヨムコン版】機械仕掛けのフェアリー・ハート

夢月みつき

第1話「砂漠の町テル」

 西暦2×××年。世界は世界大戦で荒廃し、人類はそれでも、復興しようとたくましく生き抜いていた。


 だが、数百年前は緑と人工物が共存した豊かで穏やかだった。

 このセトランドも今や “砂漠の国”と呼ばれるようになってしまった。


 ―その町は、デリーズ砂賊団さぞくだんに脅かされていたー


 ここは、テルの町の小さなひなびたギルド酒場。

 客が二人しかいない店のカウンターで、ミルクを飲んでいるのは名をソラ=クロックス。

 13歳でこのギルドに所属している少年空色の髪、青い瞳の砂とほこりで汚れたこげ茶色のマントを羽織った。“ガンマン”と呼ばれる銃を武器とする職に就いている。


 彼がそれを得意かは別として……

 少年の華奢な肩の上には、可憐なAI搭載フェアリー型アンドロイド、アリスがちょこんと座っていた。

 アリスが銀色の髪を指に巻き付けながらおもむろに口を開く。

「ねえっ!ソラ、そろそろオアシスに行きましょうよ。アタシ花が欲しいわ。」

「やだよ。僕は帰って最新刊の漫画を読みたいんだ。一人で行ってくれよ。アリス」


 その言葉と全く、やる気のなさそうなソラの態度を見たアリスは、むっと怒り顔になると。

 小さな手のひらで、ソラの頬をペチッと叩いた。



「イ・ヤ・よ!あんたアタシが砂まみれになったり、デザートゲイター砂漠のわにに食べられたりしても良いってワケ!?んもうっ、相変わらずデリカシーってもんが欠けてるんだからーっ!!」

 大きな声を出して耳元でまくし立てる。


 指で耳せんをして、聞こえないふりをするソラ。

 その声を聞きつけて、店の奥からギルド長の娘、リリーが姿を現した。

 釣り目で黒髪を三つ編みにした。なかなか、可愛い子だ。



「うるさいわよ!アリス。ソラも暇なら井戸に水を汲みに行ってちょうだい。」

 リリーは両手を腰の横に当てて、二人を叱った。

「仕方ない。行くぞアリス!」

 ソラとアリスは、町の中央広場にある井戸まで水を汲みに行く事になった。


 普段は通る者もまばらなこの町の大通りだが。その日は違っていた。

 ソラが水を入れるポリタンクを両手に持って広場までやってくると、

 なぜか人だかりが出来ていた。

「何があったんだ?」


 ソラが、人を押し分けて入ってみると肩まで掛かる金髪の可愛らしい少女を

 砂賊長デリーズが追い詰めていた。

「ソラ見てあの子大変よ!」

 アリスが指をさす。その瞬間、ソラは駆け出していた。



「デリーズ! 何してるんだっ!!!」

 ソラは少女をかばった。

 デリーズはニヤリと笑い「おや、誰かと思えば。ソラのクソガキじゃないか!

 また、俺の邪魔をするのか!?」



 拳銃の銃口を強くソラの額に押し当てた。

「やめて! あんたは、私が目的でしょう!?」

 少女が真っ青になって叫ぶ。

「勇敢なお嬢さんだ。確かミランダと言ったか?小僧の頭にカザアナがあくのを

 見たくなければ、大人しくこっちに来い!」

 デリーズはソラの額に銃を押し当てながら、ミランダに手招きする。



 その時「ハ、ハクショ~ン!!」突然、デリーズの銃からくしゃみの声が響き渡った。

 一瞬にしてその黒光りした。いかつい銃は、変形しヒゲを蓄えた小太りの小さい中年の男に変化した。



「こんな時に何をやっとるんだ。マイキー!」

 デリーズはマイキーに怒鳴った。

「へへ……すいやせん。賊長」

 マイキーは、AIが搭載されたちっちゃいオジサン型アンドロイドだ。

 アリスとは全く容姿が異なるが、こちらもフェアリータイプの機種のようだ。




 その刹那、ソラはデリーズの股間を蹴り上げ金的を食らわした。

「あ、ぎ……!?」

 デリーズは声にならない声を出して、引きつった表情で激しく飛び跳ねている。

「賊長に何をする!」



 マイキーは、ソラとミランダを捕まえようとするが。

 ソラの手のひらで叩かれてしまい飛んで行ってしまった。

「逃げるぞ。ミランダ!」

「うん!」

「待ちなさいよ!ソラ」

 ソラ達は何とか、その場から逃げる事が出来た。





「機械仕掛けのフェアリー・ハート」登場人物紹介

 デリーズ砂賊長  男 人間 36歳

 ソラを目の敵にしている砂賊団のボス。

 なぜか、ミランダを欲しがっている。


 マイキー 男 AI搭載ちっちゃいオジサン型アンドロイド。製造されて50年(50歳?)

 デリーズの武器に変形出来る。ドジっ子な性格。

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