オニゲームについて知ろう!

「顧問?良いよそれくらい」


 オニゲーム部の部員が集まった後。五人は小歌の姉であり現代文の先生でもある花江小夜歌はなえさやかに顧問になってくれないかと頼みに行った。すると小夜歌は二つ返事で了承したため、こうして一名高校に正式にオニゲーム部が設立される運びとなった。


「これでわたしたち、オニゲームの大会出れるんだよね!?」


 目を輝かせながらいつもの空き教室に集まった四人を見回すセラ。パチパチ、と何もわかっていない様子で拍手するアリアと、苦笑いを浮かべる男三人衆でセラへの反応は二分化されていた。


「大会……に出るにはまだまだ実績が足りないかな」

「実績?」

「オニゲームの大会――通称オニバライ。それにはグレードがあるんだよ」


 リヒトは颯に目をやった。颯は頷き、教室に備え付けのホワイトボードの前に立った。


「オニバライは五つのグレードがある。公式の大会だけ数えると四つだけどな」


 颯はホワイトボードにオニバライと書くと、その下に矢印を引きS、A、B、C、Eと書き記した。


「Eは地元のイベントとかで行われるオニゲームにつけられるグレード。これは公式の大会ではないけど、後々の説明でまた出てくるから頭の片隅にでも置いといて」


 颯はEの隣に矢印を引き、公式の大会ではない、と書いた。


「主に公式のオニゲームにつけられるのはA、B、Cのグレード。C、B、Aの順に格式が高くなって、それだけ相手も強くなる。Sのグレードがつくオニバライは一つだけ。毎年十月に開かれるオニバライフェスだ」

「オニバライ……」

「ふぇす?」


 セラとアリアは揃って首を傾げた。


「二人とも、オニバライフェスも知らないのか?」

「わたし去年までずっと世界中飛び回ってたから……」

「私、山下りた、最近」

「あー……なら知らなくても仕方ないか」


 小歌は水差してごめん、と颯に続きを促した。


「オニバライフェスはオニゲームの全国大会と言っても良いな。ここで優勝することを目標にするのが良いかも。全国大会なだけあって、申請すれば全部のチームが出れるわけじゃない。ある程度の実績と人気が無ければ出ることすらできないんだ。で、その実績と人気を得るために必要なのがグレードE……つまり地元のイベントで行われるオニゲームってわけ」

「んんん?公式のオニバライに出た方が良いんじゃないの?」

「最初から出れたら、な。さっきも言ったけど、俺たちは創部したばかりで実績も人気もない。そんな支持されてない奴らをオニバライに出したところで観客が集まるわけないだろ?」

「だから僕たちはグレードEのオニゲームに出場する必要があるんだ。イベントなら自然と人が集まるから僕たちのことを見てもらえる。それに経験も積めて一石二鳥、というわけだよ」

「そっかぁ」

「後でまとめとくな」

「カザミン好きー」


 さすがは経験者なだけあって詳しい説明をしてくれた颯にみな拍手を送る。颯は照れながらも手を振り自分の席にまた戻った。


「じゃあまず、わたしたちは」

「グレードEにとにかく出場する」

「そして、人気、集めて」

「徐々にグレードの高い大会に出る」

「で、ゆくゆくはオニバライフェスに……っていうのが理想的だな」


 意見のまとまった一名高校オニゲーム部。みな顔を見合わせると、頷き合った。


「それじゃ、オニゲームが一緒に開催されるイベントについて調べておこうか。どれに出場するか決めたら、それまで体力づくりだね」

「うへぇ……」

「コウタ、どうした?」

「いや、わかってはいたけど……それでも体力づくりってなると苦手だからなぁオレ」

「よくそれでオニゲーム部入ろうと思ったな?」

「うっせ」


 小歌はべ、と颯に舌を出した。


「オニゲームには様々なスキルが要求されるからね。体力づくり以外にも色々やるつもりだから安心して、花江くん」

「色々……?」

「とりあえず僕と風見くんで練習メニューを考えておくよ。今日のところはみんなもう休んでほしい。セラの足もまだ完全に治ってないしね」

「面目ない……」


 しゅん、と見るからに落ち込んだセラの頭をアリアが撫でる。


「それじゃ、今日は解散で」

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