風見颯VS一名高校オニゲーム部(仮)!①
「さぁ始まりました風見くんと一名高校オニゲーム部(仮)によるオニゲーム!実況は私一名高校二年生放送部員の
「解説は同じく一名高校二年生放送部員の
一名高校オニゲーム部創設をかけたことオニゲームは、校舎を丸々使える代わりに『オニゲームの様子を全生徒が見れる形で中継する』という条件のもと行われていた。
かくして一人一人に配置されたドローンと校舎内に飛ばされたドローンにより、屋上に集まった多くの生徒たちがオニゲームを見守っていた。
「お前どっちに賭けるー?」
「やっぱ風見じゃね?めっちゃ足速いんだろ?」
「でもさすがに四人捕まえるのは無理だろ~。制限時間たったの五分だぞ?」
などと好き好きに囃し立てながら、みな颯が走り出すカウントが終わるのを今か今かと待っていた。颯に追尾するドローンから流される映像には、ストレッチを淡々とこなす颯が映しだされている。
「さぁカウントが残り五秒となりました!」
「ここはみんなでカウントしましょう!せーの!」
『五!』
颯はストレッチをやめる。
『四!』
小歌は緊張の面持ちで走っている。
『三!』
アリアはドローンを睨みつけている。
『二!』
リヒトは穏やかな笑みを崩さないまま周囲を見渡している。
『一!』
セラはドローンに笑顔で手を振った。
『ゼロー!』
十秒のカウントダウンを終え、ドローンのカウントが五分に切り替わる。その瞬間、颯は風と化した。一瞬ドローンがついていけないほどの速さで走り出した颯は、スタート地点のある三階の廊下を突っ切った。
「おぉ……!なんという速さなんでしょう風見選手!」
「ドローンが置いて行かれるほどの速さとは……!これは誰もが呆気にとられても仕方ないほどの速さです!」
階段を一階まで一気に駆け下りた颯の視界に、小歌の姿が捉えられた。
『見つけた!』
『げぇ!?もう来た!?』
あからさまに嫌そうな表情を浮かべた小歌との距離を一気に詰めた颯は、容赦なく小歌の肩を叩いた。
『いってぇ!?』
『まずは一人』
「開始一分も経っていないのにもう一人捕まりました!」
「さすがはオニゲーム界のホープと呼ばれた男なだけはあります!この調子であと三人捕まえられるのでしょうか!?」
小歌を放ってまた走り出した颯。一分経過しそうといった頃に、体育館でリヒトの姿を捉えた。
『先輩でも容赦はしませんよ』
『おや、想像以上だね』
見つけられたというのにリヒトはいつもの穏やかな笑みを崩さない。小歌を相手にした時よりも時間はかかったが、颯はまた難なくリヒトを捕まえた。
「さすがは風見選手!まだ一分半しか経っていないというのにもう半分捕まえたぞ!」
「あと二人は逃げ切れるのでしょうかー!?」
残されたのは、アリアとセラの女衆二人。女子が相手となれば、どう考えてもオニゲーム部(仮)の方に勝ち目は無い。
「こりゃ風見の圧勝かなー」
「いやー校舎でオニゲームやるって聞いた時はワクワクしたんだけどな。まさかこんな呆気ないとは」
観客の生徒たちの中にはもう映像から目を離し始めた者もいた。そんな中、達也が首を傾げる。
「あれ」
「どうかした?篝くん」
「いや、さっきから瀬良さんずいぶん余裕だなって」
セラの追尾ドローンから流れる映像には、セラが鼻歌混じりに校舎を歩くところが流れていた。
「プレイヤーたちは何人捕まったか通知されないのもあるんじゃない?」
「うーん、そうなのか……?それだけじゃないような……」
『いた!』
その時颯の声が聞こえてきた。颯の視界にはアリアが捉えられている。ドローンが制限時間は残り二分三十秒であることを颯に伝える。アリアもまた颯を捉え、颯に背を向け走り出した。
『!?』
アリアの足の速さはリヒト以上のものだった。颯ほどではないが確実に足が速い方に分類されるであろう彼女の走りに颯は一瞬呆気にとられたが、すぐにまた速度を上げ走り出す。
『意外とやるな、山中!』
『そっちこそ。楽しく、なってきた?』
『!?』
『始まる前、より、活き活き、してる』
『……そんなわけあるか!』
颯は再び速度を上げる。さらに加速した颯は、アリアに難なくタッチした。
『はぁ……はぁ……』
『私、最後?』
『いや、あと瀬良が残ってる』
『そう。セラ、捕まえる、できる?』
『俺の足があれば誰だって捕まえられる』
『そう。がんばって』
意味深に微笑んで去っていくアリアを見送った颯は、また校舎を探し回り始めた。制限時間は残り二分だ。
「おーっと山中選手もここで脱落だー!!」
「さぁ残りは瀬良選手のみ!瀬良選手は最後まで逃げ延びれるのか!?」
ここで脱落したリヒトと小歌が屋上に現れた。
「盛り上げてくれてありがとう、播磨さん、篝くん」
「いやいや、礼には及ばないって!私達も楽しいし」
「そうそう。またとない機会だしなー」
「見たところ、セラはまだ捕まってないみたいだね?」
「うん。残りは瀬良さんだけだね」
「そっか。――
そう言ってリヒトはニコ、と笑った。
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