12/10 『F』の日

 昨日『F』において僕はキャラメイクし直したと書いた。なかなか良さげな感じに仕上がり、

「このキャラでしばらく遊ぼうかな」

 と考えていたが、結果として一日で再びのキャラメイクとなってしまった。


 今日の午後、『F』にログインしながら妻が言った。

「今キャラメイクやり直そうか悩んでる」

 と。どの種族になりたいのか尋ねると、三つほど候補が挙げられた。そして話しているうちに気持ちが固まったのか、あっという間に課金してキャラメイクを始めていた。


 しばらくの後、妻のキャラは小さな体躯のかわいらしい種族になっていた。僕が昨日作ったキャラは背の高い美人だったので対照的だった。

 そのままゲーム内でフレンドとチャットしているうちに僕のキャラも同じ種族にしようという話になった。

 実は僕はその種族があまり好きではなかった。身体が子どものように小さいため、背負っている武器がなんだかおもちゃのように見えてしまうのだ。そして残りの課金アイテムもあと一つである。

 しかし、悩むのはほんの一瞬だった。どうせなら妻と同じ種族で一緒に冒険するのも悪くない。

 決断したならすぐ行動。思い立ったが吉日な僕だ。すぐさまログアウトしてキャラメイクを始めた。

 髪色などは妻にアドバイスをもらい、僕のキャラは無事かわいらしくなった。後悔なんて微塵もない。僕の『F』ライフはカッコいい冒険者からあざとさもありそうなかわいい娘に急ハンドルを切ることになったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る