第29話 崩れゆく邪な思惑

 「ば、バカな……! オブシディアンゴーレムが敗れるだと!?」


 体の一部を失ったを失ったオブシディアンゴーレムはバランスを崩し、そのまま倒れてく。

 そのゴーレムの方にふんぞり帰っていたクレスタも情けない声をあげながら落下していた。


 「まだだ、まだ私が動けるうちはこれで終わりではない!!!」


 クレスタは立ち上がり、禍々しい形の剣を強く握りしめると、彼の体に黒いオーラが纏い出す。


 「この力さえあれば、勇者といえど私の敵ではない!!!!」


 叫び声をあげながらクレスタはこちらへ駆け出す。

 そして、禍々しい剣を大きく振りかぶってくる——


 ——だが、クレスタの剣が振り下ろされることはなかった。

 その前に俺の剣、ラファーガが彼の持つ剣の刀身を真っ二つに切り裂いた。


 「そ、そんな……!」


 自分の武器を破壊されてその場に崩れ落ちるクレスタ。

 そこへチェイサーが彼の首元に剣を突きつけた。

 

 「にいさ……いや、謀反者クレスタ・ビス・カーロラ……貴様を拘束させてもらう」


 そう告げたチェイサーは少し悲しそうな表情を浮かべていた。


 それから暫くしてマーク王子が騎士団と一緒にやってきて、拘束されたクレスタを連れて行った。


 「どうやらこれで終わったみたいだな……」

 「あぁ……そうだ……な」


 俺の体が一瞬、グラっと歪み出す。


 「ゼスト……!?」


 それに気づいたプリメーラが俺の体を掴んでいた。


 「大丈夫、ちょっと今回ははりきりすぎたかな」

 「……いや、疲れが残っているのかもしれない、ここのところ出ずっぱりだったし」

 「そうかもな……」


 何が原因なのか俺はわかっていた。

 さっき使った技はわずかではあるが、魔力を消費する技だ。

 微々たる魔力しかない俺が使えば体に負担をかけてしまう。


 ——前使ったときは魔力を帯びた聖剣でやっていたのでこんなに負担になることはなかったが。


 下手にいうとプリメーラが心配しそうなので、黙ったまま俺は彼女の肩に掴まりながらゆっくりと歩いていった。



 

 一方で遠く離れた王都ブラバスでは……


 「どうやらクレスタは失敗に終わったようだな……ガヤルド」

 

 謁見の間にて、イソッタ王太子もとい、イソッタ王の横に立つ黒いローブを被った男が声を上げていた。


 「はい、所詮は出来損ないの王子でした……既に次なる作戦を考えておりまして」

 

 ガヤルドと呼ばれた灰色のローブを深く被った男はイソッタの前でひざまつきながら、淡々と答えていた。

 

 「さすがだな、では聞かせてもらおうか」

 「かしこまりました……」


 ガヤルドが話を始めようとした直後にイソッタは立ち上がる。

 

 「いや、その必要はない」

 

 イソッタの言葉に彼の隣にいたローブの男は静かに声をかける。


 「それではどうなさるおつもりでしょうか?」

 「貴様も知っているだろう、あやつを使うのだ」

 「あやつといいますと……先日の儀式で誕生した」


 黒いローブの男の話を聞いたイソッタは口を歪ませる。


 「そうだ、聖剣ソアラブレイドに選ばれし新しい勇者だ!」


 イソッタの言葉に黒いローブの男はニヤリと同じように口を歪ませていたが、イソッタの目に映ることはなかった。




 「終わったよゼスト!」

 

 クレスタとオブシディアンゴーレムを撃破してから3日が経った。

 微々たる魔力を必要以上に使ってしまったため、チェイサーの屋敷に戻ってからグッタリとしていた。

 その間にプリメーラはずっと看病をしてくれていた。

 ……看病されるほどではなかったが、本人曰く何かしないと落ち着かなかったそうだ。


 その間に拘束されたクレスタは国家転覆を謀った罪で幽閉された。

 チェイサーの話では牢に入れられたクレスタは憑き物が取れたかのようにおとなしくなっていたようだ。

 そもそもこれが本来のクレスタの姿だとも話していた。


 今回の件に関して、裏にいた人物を探るため今は牢に入れられているが、それがわかった時点でどうなるかはわからない。

 よくて国外追放、悪ければ——


 「どうしたの?」


 考え事をしていると、ナディアが俺の顔を覗き込むように見ていた。


 ライカンスロープの生き残りである彼女も俺たちと一緒にチェイサーの屋敷で休んでいるうちに、元気になっていった。

 今朝、彼女からみんなのところへ挨拶にいきたいと言われ、集落のあった山脈の麓まで来ていた。

 俺とプリメーラが埋葬して行ったところをマーク王子の計らいで国の教会に頼んで墓を作ってもらった。

 

 「いや、なんでもない……プリメーラが心配するしぼちぼち戻るか」

 「うん!」

 

 元気よく返事をしたナディアは俺の腕を掴む。

 最初会ったときは敵意剥き出しにして襲いかかってきたナディアだったが、まさかこんなふうに懐くようになるとは……


 それにしても……


 「なんか、顔が真っ赤だけどどうかしたの?」

 「……いや、なんでもない」


 集落に行ったときは気づかなかったが、意外と彼女の発育の良さに驚いていた。


 「おかえりゼスト、ナディア」


 チェイサーの屋敷に戻ると、プリメーラが出迎えてくれた。


 「ただいま、チェイサーは?」

 「先ほどマーク殿に呼ばれたとかで城へ行った、夕飯までには戻るそうだ」


 話をしていくプリメーラの視線は徐々に下へと下がっていった。


 「……それにしても随分と仲良くなったものだな」

 

 彼女の視線はナディアが掴んでいる俺の腕へ。


 「まあな……って目がすわってるがどうしたんだ?」

 「なんでもない、それよりもメイド達がお菓子と紅茶を用意してくれたみたいだから頂こうじゃないか」


 そう話すとプリメーラはすぐに屋敷の中へと入って行った。


 「プリメーラ怒ってたみたいだけど何かした?」

 「さあ……?」


 俺とナディアは首を傾げながら屋敷の中へと入っていった。


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【あとがき】

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