#17 初めての任務 その④

一方、葵達は如月警部の車の中に居た。


神原 朱珠

『なあなあ、葵ちゃん!

テンション上がらへん?

私こんなオシャレな車に乗ったん

初めてやわぁ♪』


朱珠は上機嫌で、はしゃいでいた,


神原 朱珠

『なあなあ、如月警部!

警部さんって、こんな儲かるん?』


如月警部

『そんなに儲からないよ。

この車だってローンを組んでるからね。』


神原 朱珠

『でもこの車を、

ローンで買えるくらいは貰うてんやな!

私ん所の従兄弟とか絶対に無理やわ!』


如月警部

『従兄弟って何歳くらいなの?』


神原 朱珠

『確か27歳やねん。』


如月警部

『27歳! 兄貴と一緒だ!』


神原 朱珠

『如月警部、お兄さん居るん!』


如月警部

『居るよ。 2歳年上のね。

バラちゃんは、

お姉ちゃんとかお兄ちゃんとか居るの?』


神原 朱珠

『おらへんよ!

でも歳の近い、従姉妹とか従兄弟とか、

歳の離れた伯母とか叔母とか、

伯父とか叔父ならおんねんで!』


如月警部

『ははは!

なら余り寂しく無いかもね!』


神原 朱珠

『せやねん!』


意気投合した2人は、

楽しそうに話しをしている。


そんな中、

白華は葵に話しを切り出した。


林藤 白華

『リーダー。

バラちゃんって、

週の契約時間は何時間なの?』


綾女 葵

『24時間よ。

だから週に4回は来てくれるわ。』


林藤 白華

『そうなんだ。 それは助かるね。

ユリちゃんもヒマワリちゃんも、

出勤時間が少ないもんね。』


葵と白華の話しに割り込む形で、

『ユリちゃんもヒマワリちゃんも、

出勤時間少ないん?』

と葵と白華に尋ねる朱珠。


林藤 白華

『如月警部と話しているから、

聞こえていないのかと思っていたよ!

聞こえてたんだね!』


綾女 葵

『そうね。

今度、何人の話しを一度に聞けるのか、

試してみるのも良いかもしれないわ。』


神原 朱珠

『お! ええなあ! それ!

もしかして、私も偉い人になれたりする?』


林藤 白華

『どうだろうね?

それだけで偉くなった訳では無いからね。』


苦笑いを浮かべる白華。


神原 朱珠

『それはそうと、2人は何日出勤なん?』


綾女 葵

『ユリちゃんは週3、

ヒマワリちゃんは週2よ。』


林藤 白華

『と言っても、ヨツバちゃんの家に、

ユリちゃんは毎日来てるけどね。』


神原 朱珠

『えっ! 何でなん?』


林藤 白華

『ユリちゃんには、

小学生の弟さんが2人居るから、

弟さんが学校から帰って来ると、

賑やかで趣味の読書が出来ないんだって。』


綾女 葵

『そう言いつつも、

アサガオちゃんの後を追って、

外へ出て行っているみたいだけどね。』


林藤 白華

『彼女は、アサガオちゃんの事を、

物凄く心配している所があるからね。』


神原 朱珠

『ふ〜ん。 でもそれならやなぁ。

アサガオちゃんと同じ出勤日数にしたら、

ええんちゃうの?』


綾女 葵

『そうね。

でも人数が少ない時は

3人で目的地へ向かったり、

個々に分かれて行動する事もあったから、

ずっと側に居るとなれば、

その方が効率が良かったんじゃないかしら?』


林藤 白華

『そうかもね。』


神原 朱珠

『成る程な。』


朱珠は納得した直後、

『あっ! そいや、

皆はどんな霊体が憑いてんの?』

と葵と白華の顔を眺めて来た。


林藤 白華

『私は、今何も憑いていないよ。

この間、成仏して空へ昇って行ったからね。』


神原 朱珠

『へぇ〜。

ほんまに霊体って、空の上に居んねんな。

葵ちゃんは、どんな霊体が憑いてんの?

あっ! ユリちゃんは! ユリちゃん!』


興味津々な朱珠に対して、

『時期に、分かる時が来るよ。』

と言い苦笑いを浮かべる白華。


そんな会話が進む中、如月警部が口を開いた。


如月警部

『そう言えば、四葉さんはどう?

まだ情報は集まらない感じ?』


綾女 葵

『えゝ、まだ全く集まっていないわ。』


如月警部

『そうか・・・。 難しいよね。

署の方でも情報は集めてくれているんだけど、

流石に限界があってね・・・。』


神原 朱珠

『何なん?

ヨツバちゃん、

そんな凄い霊体が憑いてんの?』


綾女 葵

『えゝ、物凄く厄介な霊体がね。

だからヨツバちゃんは、外へ出たがらないの。

"もしもの事"があるといけないからね。』


葵と白華と如月警部の表情は、

先程とは違い、少し真剣な表情をしている。


神原 朱珠

『(凄い霊体? 何なんやろ?

凄く聞きたいねんけど、

何か聞ける雰囲気やないなぁ・・・。)』


そうこうしていると、

如月警部の運転する車は、

海岸付近のコインパーキングに到着した。


------------


如月警部は、車を止めると、

『とうちゃ〜く(到着)!』と言い、

先程と同じ明るいテンションに戻っていた。


朱珠が窓の向こうを見ると、

そこには綺麗な海岸が広がっていた。


外に出るなりコインパーキングから、

海岸を一望出来る所まで走り、

大騒ぎする朱珠。


神原 朱珠

『葵ちゃん! リンドウちゃん!

こっち! こっち!』


そんな朱珠の姿を、

少し離れた所から立ち止まり眺める葵と白華。


綾女 葵

『本当に元気ね。』


林藤 白華

『そうだね。』


そう言うと、

葵は朱珠の方へと歩いて行った。


そんな中、隣に立っている如月警部に向かい、

『すみません。 気を悪くされていませんか?』

と尋ねる白華。


如月警部は白華の問いに笑いながら、

『全然、気にしてないよ。』と言うと、

再び朱珠の方を眺め、

落ち着いた口調で話し始めた。


如月警部

『良いんじゃないかな?

このチームには、ああいう子が居た方が。』


如月警部の言葉を聞き、

白華も『そうですね。』と言い、

朱珠の方へ再び目をやった。


白華の見つめる先には、

笑顔で葵の腕を引く朱珠の姿があった。

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