#14 初めての任務 その①

6人は緑莉の組んだ通り2チームに分かれて、

それぞれ目的地へ向かっていた。


神原 朱珠

『私達は、今からどこに行くん?』


綾女 葵

『刑事さんの所よ。』


神原 朱珠

『刑事さん!』


綾女 葵

『調査依頼があってね。

場所や内容は

メールで送られて来ているんだけど、

度々、お世話になっている人だから、

一度、あなたも紹介しておこうと思って。』


神原 朱珠

『何か急に緊張して来たわぁ!』


林藤 白華

『そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。

彼は、優しいからね。』


神原 朱珠

『彼って、その刑事さん若いん?』


綾女 葵

『確か23歳くらいだったと思うわ。』


林藤 白華

『うん。 そうだね。

確か、そのくらいだったと思う。』


神原 朱珠

『へぇー! その人、カッコ良いん?

何かちょっと、わくわくして来たわぁ〜♪』


綾女 葵

『単純ね。』


呆れた目で朱珠を眺める葵と、

困り顔で朱珠を眺める白華。


------------


10分程、歩いた頃、

朱珠は再び、2人に気になる事を尋ねて来た。


神原 朱珠

『一つ聞きたい事があんねんけどな。

アサガオちゃんは、電話でも話したし、

少しは分かった気がすんねんけど、

ユリちゃんとヒマワリちゃんって、

どんな子なん?』


林藤 白華

『ユリちゃんは、一見クールに見えるけど、

2人弟さんも居るし面倒見が良くて、

"頼りになる子"って感じかな?


私が早朝、ランニングをしていると、

毎日、楽しそうにワンちゃんと

散歩をしているユリちゃんに会うからね。

動物も大好きなんだと思うよ。』


神原 朱珠

『ヒマワリちゃんは、

見た目通り甘えん坊だけど、

凄く勉強熱心な所があるから、

"努力家"と言った所かしら?』


神原 朱珠

『成る程な。

・・・てか、

ヒマワリちゃんの高校って・・・。』


綾女 葵

『リンドウちゃん、ヨツバちゃんは、

「黄桜女子高等学校」の2年生。

ヒマワリちゃんは、

「黄桜女子高等学校」の1年生よ。』


神原 朱珠

『やっぱ、そうなん!

その学校なら私も分かんで!

人気やけど、

めちゃくちゃ入試が難しい所やろ?』


『そこまでじゃないよ。』と、

照れ笑いする白華。


綾女 葵

『いえ、立派だと思うわ。

進学や就職のサポート面も強いんでしょ?』


林藤 白華

『そうだね。

その辺りは、確かに強いかも。』


神原 朱珠

『アサガオちゃんとユリちゃんは、どこなん?

2人共同じ制服やんな?』


林藤 白華

『2人は『山桃高等学校』だよ。

アサガオちゃんが、私達と同じ2年生。

ユリちゃんは、1年生。』


神原 朱珠

『嘘やろ!

ユリちゃんの方が、年下なん⁉︎』


林藤 白華

『ふふ。

ユリちゃんは、

確かに1年生には見えないかもね。

彼女は、落ち着いているから。』


話しながら交差点を曲がる3人。


林藤 白華

『山桃高は、

先生もクラスの子も凄く優しいって、

2人が話してたよ。

山桃高はスポーツに力を入れているんだって。

去年も全国大会の予選には落ちたけど、

バスケ部と卓球部が、良い成績を残したって、

地元のニュースで取り上げられていたよ。

今年こそは、

全国大会に出場するんじゃないかな?

聞いた話しでは、

昨年以上に練習に励んでいるらしいからね。』


神原 朱珠

『そうなんやな。

皆の学校は楽しそうで、ええなぁ。』


林藤 白華

『バラちゃんは、今の学校が不安?』


神原 朱珠

『不安と言うかな・・・。』


林藤 白華

『気になる言い回しだね。

いつでも相談や愚痴なら聞くよ。』


にこにことしていた白華は、

少し暗い表情で、

『でも、どこか惹かれる所はあったんでしょ?

今の学校に?』と、

先程よりも落ち着きのあるトーンで、

朱珠に話しかけて来た。


神原 朱珠

『せやねんな。

見学した時は楽しかったし、

口コミもそこそこ良かってん。

でも、入ってみな分からん事って

結構多いんやなって思ったわ。』


林藤 白華

『そうか・・・。』


そう言うと、白華は小さく、

『やっぱり、外には出ていないんだ・・・。』

と呟いた。


神原 朱珠

『ん? 今何て?

ごめん! 車が煩くて聞き取れへんかった!』


朱珠の問いに、

白華は再び笑顔に戻り、

『いや! 何でも無いよ! 気にしないで!』

と答えた。


林藤 白華

『あっ! そうだ!

黄桜高に編入したいと思った時は、

直ぐに言って!

私とヨツバちゃんが

勉強を教えてあげるから。』


白華の言葉に、

『気持ちは嬉しいねんで!

でも、そんなん一生無理やわ!』

と目を大きく見開き返答する朱珠。


神原 朱珠

『まあ、葵ちゃんと相談して、

合いそうな高校が見つかったら

2人で受けるわ!

な! 葵ちゃん!』


綾女 葵

『そうね。』


林藤 白華

『リーダーも来るなら、

尚更、黄桜高においでよ!

私が面倒見てあげるから!』


綾女 葵

『私達には、一生無理な話しよ。

リンドウちゃんみたいに、

3姉妹揃って黄桜高に入学するケースは、

極稀よ。』


神原 朱珠

『嘘やろ!

姉妹全員居るん!』


林藤 白華

『今居るのは、一つ上のお姉さんだけだよ。

一番上のお姉さん一昨年、卒業したから。』


神原 朱珠

『エリート一家なんやな・・・。』


綾女 葵

『超が付く程のね。』


照れながら、

『そんな事、無いって!

私の話しは、いいから。いいから。

それより警察署が見えて来たよ!』

と言うリンドウ。


朱珠が辺りを見渡すと、

そこには4階建の比較的新そうな造りの

警察署が信号の向こうに建っていた。

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