第3話 酔いどれエルフの配信飲み

 さて、犬神さんの本日の夕食というかオツマミは皿うどん。長崎のあのどちゃくそ美味しい料理な訳だ。揚げ麺に野菜や海鮮、ぶたにくやかまぼこが入ったあれらがあんかけで最初はサクサクあとはしっとりして甲乙つけがたい美味しさは忘れられない。

 これは異世界の住人・セラさんの意見である。


 グゥウウウウ!


「これこれ、私のお腹。そんなに泣くものじゃない」

「さっき食ったのに、エルフとかいう珍民族は燃費悪いのな?」

「犬神さん、エルフはだな! 人間よりも多くの知恵をもって、森に住む賢人だなんて言われているんだ! そもそも貴方の世界の日本だってエルフは大人気じゃないか! 私は人気があるんだ!」

「主に薄い本でな」

「そ、それは……犬神さんの国の人間が少し頭がアレなんだ! ゴブリンやオークだってあんなど変態じゃなくてもう少しプライドはあるぞ!」

「まぁ、それは否定せんわ。セラ、皿うどんできたから取り皿と、ビール持ってきて、瓶のやつ」


 セラさんは敬礼ポーズで「かしこまりぃ!」と取り皿、そして冷蔵庫から冷えているビール……


「犬神さん、アサヒですか? 麒麟ですか? サッポロですか?」

「ラガー、サッポロの赤星で」

「しかし、エルフの私が言うのもなんだが、犬神さんのお部屋。お酒しかないよな?」

「趣味だからな。酒以外にも文学集やサブスク観る為のプロジェクターもあんだろ」


 セラさんは部屋に設置してある巨大なリカーラック、そこに普段飲みのスピリッツが並べられていて、冷蔵庫にはビール及び瓶と缶のお酒がびっしり、別の冷蔵庫は日本酒用。ワインセラーもあり、戸棚や屋根裏には備蓄用のお酒。この世界の他の人の家を覗いた事がないので分からないがセラさんでもこれが普通の家だとは思えない。


「そんな事よりグラス冷やしてるから食おうぜ」

「それもそうだな! 確かにそんな些細な事はどうでもいい。犬神さん、何か観るか?」

「あぁ、そうだな。野球にして」

「犬神さん野球好きだなぁ」


 テレビのない家だが、サブスクでスポーツ観戦。プロジェクターを使った大画面で見る映像は迫力があり、お酒が進む。

 二人はお箸を持つと、


「「いただきます」」


 サクサクな状態での皿うどんを租借、そしてキンキンに冷やしたグラスにキンキンい冷やしたビールを注いで、喉を鳴らしながら飲むとそれは……


「くぅううう! これだなぁ!! 犬神さん! ん? どうしたんだ? その、残飯を漁っているオークを見るような目は」


 犬神さんはグラスにトクトクトクとビールを注ぐとくいっと一口。そして皿うどんを小皿にとってひょいパクっと。


「うん、うまいな。うん。これだな。セラお前、外でもそんな感じで飲んでんの? もしそうなら恥ずかしいから外出禁止な」

「いやまってくれ! 本日ハイボールを飲んだ時、はぁああ! と確かになったが声には出していないぞ! それに変装! そう変装をしているんだ」

「あぁ、そのクソ怪しい恰好な、まぁお前が稼いだ金でお前が何しようと別にいいけど、住むところ提供してやってる俺にこれ以上迷惑かけたら殺すからな?(社会的に)」

「もうやだなぁ! 犬神さん、生活費だって支払ってるじゃないかぁ!」

「俺のアカウントで勝手にはじめた動画配信でな?」


 そう、住所も戸籍ももたないセラさんは犬神さんの家で犬神さんのお古のPCとスマホを使って、犬神さんのアカウントで動画配信をはじめ、これが微妙にプチバズリし、食費代くらいにはなっていたりする。


“ほろ酔いエルフの晩酌”という犬神さん曰くクソ動画、そして今も何気にスマホを使って配信中である。


「ほらほら、犬神さん! 犬神さんの辛辣な態度におこな男性リスナーさんと、喜んでる女性リスナーさんがいますよ!」

「はーん、どうでもいいけど、何勝手にクソ動画配信してんの?」


 犬神さんは皿うどんを食べながら、ビールをこくりと飲み、瓶が空になると冷蔵庫にお代わりを取にいく。


「…………あの、犬神さんに家賃を払う為に」

「別に生活困ってないし、お前が勝手に生活費いれてんだろ?」

「い、犬神さんの料理が超美味しいので、それを世間の人に知ってもらおうと……」

「あそう、じゃあいいや。で? セラのクソみたいな飲み方を喜んで見るクソみたいなリスナーばっかりって事は、酒カスの集まりって事か? ひくわー」


 基本的に動画や生配信という物は炎上を畏れてしかるべきである。ささいな失言から炎上して大変な事になる数々の事例が物語っている。


“セラさんといつも一緒にいる犬神さんは彼氏さんですか”


「はぁ? なんで俺がこんな酒カスと付き合わないとダメなんだよ。なんだその罰ゲーム! これ書き込んだ奴調べ上げてぶっ殺すぞ(社会的に)」

「あぁ、犬神さんそんな事言うと……あれ、なんか課金してくれてるぞ? 私と犬神さんがそういう関係じゃなくてよかったご祝儀だそうだ。やったね!」

「お前、今日のデザートの杏仁豆腐抜きな」

「後生だ! シメ無くして飲んだ事にならんじゃないか!」

 

“コインが投げ銭されました“

 

 酒カスは、わりと財布の紐が緩い。三本目、四本目と瓶のビールを冷蔵庫に取りに行く犬神さんの足元が何度か映り、その犬神さんの酒カスっぷりからなぜか男性陣にもプチ人気がでて、普通体形だが着ているジャージがハイブランド(お酒を購入した時の抽選で当たった)な事から女性にもプチ人気が出始め、彼の事をリスナーが光の呑み友と呼びだすのに時間はかからなかった。

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