第五回 「緑ヶ丘剣舞高校生徒会長『武者小路ソニア』」そのニ
「あなたと交わす言葉はありません。蒼山君」
「…………そうっすか先輩」
ソウルイーター先輩が俺をクソ虫でも発見したかのような面持ちでため息まじりにじろりと一瞥。
用があるのか尋ねるほど面識があるわけではないので、ここは知らないふりしてやり過ごした。
俺とソウルイーター先輩は仲が悪い。いや、正確には俺が一方的に嫌われているだけ。認識されないよりは好感度回復したかもしれないが未だに扱いが最悪だ。
半年前の冤罪事件。お婆ちゃんが正常の精神状態ではないことから警察の仲介で内々で済んだけど、俺とソウルイーター先輩の確執は今も続いている。
まーその原因はほぼ俺にあるんだけどな。それは追々話すよ。
「俺は先輩が挨拶してくれて嬉しかったっすけどね。小躍り、または狂喜乱舞……は大袈裟か」
「ただの間違いです。あなたみたいな愚連隊に喜ばれても嬉しくもないです。大体女なら誰でも口説くその素行の悪さなんとかならないのですか?」
「そっすか? 誰でもじゃない。ソウルイーター先輩だから口説くっすよ。可愛いから」
もちろんそんなつもりはサラサラない。からかいたいだけなんだが。元々接点が少なく話す話題がないから口下手な俺には結局これしかできない。
日頃から担任の先生と生徒会長には迷惑を掛けているので感謝を表したいのだがうまく行かないものだ。
「見た目通りのチャラ男ですね。馴れ馴れしい。とても不愉快です」
「ははっ、顔は笑っているのに声が怖いわ」
「そのソウルイーター先輩というのもそろそろやめてもらえませんか? 侮辱ですよ」
「武者小路生徒会長というより好きですれどね。そのニックネーム。今じゃ全校生徒が使用してますしね」
ソウルイーター先輩はキッと軽蔑の目を俺に送りここから離れた。
この通り俺には厳しい。確かに蒼山海青はどちらかというとアウトローだ。気分で授業サボったりするから真面目な生徒ではない。でも成績もそれなりにいいし学校行事には積極的に参加している。
それでも対応が最悪なのは胸揉んだことだろうな。触り心地良かったもんな。
「海青、そのイヤらしい手付き何さ。普通にキモいっぺ」
「そうか」
「なぁ、もしかして、海青がみんなにことのあら回しを弁明しないのって生徒会長に悪意が向かないようにする為でないかい? あれだけカリスマある人なら妬みも多いだろうから」
「いいんだよ。もう終わったことだ。蒸し返すな。今度はお前の胸揉むぞ」
「あーあ、黙秘する俺ってかっこいいってか? 実に難儀な奴だべな。正義のダークヒーロー様」
白石は呆れ顔で嫌いじゃないけどと呟き玄関へ自分の下駄箱を目指す。
いいんだよ。世間の噂なんてどうでもいい。世界を敵に回したって妹さえ味方でいてくれればそれで満足さ。
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