【九枚目:声】

 ホームへの階段を登り終えた時、遠くに赤色の電車が見えた。到着予定時刻よりも少し早めだ。


 「いつか、また写真みせてよ」と笑った悠斗の眉は八の字になっていた。


「任せとけって!」


 そう言って親指を立てた左手を前に出すと歯を見せて笑った。

 それと同時に電車が止まりドアが開く。


 拓海は電車に乗り込み、券売機のボタンを押して券を手に取った。


「じゃあな」


 ドアの前に立ち声をかける。

 「またね」と悠斗が言った後、電車のドアが音を立てて閉まった。


『     』


 拓海がガラス越しに外を見ていると、悠斗が何かを呟いた。

 ドア越しで声は聞こえなかったが、拓海には口の動きで確かに伝わった。

 そして電車が動き出す——。



 座席に座ると自分の隣に荷物を置いた。

 相変わらず車両の中には誰もいない。広々と座席を使って問題ないだろう。


(また一人になってしまった……)


 背もたれにもたれかかると両足を前に投げ出す。


(帰ったらバッテリー充電して、写真確認しないとな)

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