第5話 グレイブとドロシー

申し訳ありません 一話先の話を投稿しておりました。


12月4日の12時から13時の間に5話を読んだかたは、もう一度読み直していただけると助かります。


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 しばらく歩いていると、崖が見えてきた。確かこの上に薬草の生えている泉があるのだ。でっばりがあるので多少頑張れば女の子でも登れるだろう。

 健康な人間ならばという条件が付くが……



「うう……これは厄介ですね……」



 何度か頑張って登ろうとするも、握力が足りず滑り落ちるドロシー。病弱ということもあり、日ごろ引きこもっているから体力や筋力が低いのだろう。



「ドロシー様、無理をしないでください!!」

「いやです、無茶もしますよ。あなたは私のために無茶をしてこんなところまできてくれているんですから……」

「ドロシー様……」



 強がっているのがまるわかりな笑みを浮かべるドロシーに、それに感動するナルヴィ。まったく百合な世界をつくりやがって……

 俺の存在を忘れてもらっては困る。俺は百合の間に入って爆乳ハーレムを作る男なのである。そして、いまこそ、ナルヴィにかっこいいところを見せるチャンスだろう。



「つらいんだったおぶってやるよ、体を鍛えているからな。気にするな」



 俺は背中におぼされと体をかがめてやる。その様子に怪訝な顔をするドロシー。



「本気ですか?……ですが……ゴホゴホ……」

「ドロシー様、ここはグレイブ様の御言葉に甘えましょう。大丈夫ですよ。グレイブ様はお優しいですから!!

「わかりました……では、お言葉に甘えます」



 一瞬迷った様子を見せたが素直に従うドロシー。ずしりと重いものがのしかかってきて柔らかい感触が俺の背中を包む。本音をいえばドロシーは俺を殺す相手だ。親切にする義理はない。だが、ここでかっこよいところをみせればナルヴィの好感度が上がるだろうという巧妙な作戦だ。

 決してこいつに感謝されるのもまんざらじゃないなと思ったわけではない。俺は爆乳派だからな。



「大丈夫か、しっかりつかまってろよ。魔物が出たら魔法を使って倒してくれ」

「はい、わかりました」



 背中でドロシーの声が聞こえてくる。しかし……流石は絶壁ヒロイン……ちっとも柔らかくない……これがナルヴィだったらなぁ……

 おそらくバストサイズはAAAである。これが冒険者ランクとかだったら強そうなのに……



「うおおおお。首がしまるぅぅぅ」

「お兄さま、今、失礼なことを考えてませんでしたか?」



 耳元で感情の一切ない声が聞こえる。やっべえ、こいつの観察力を甘く見ていた……てか、結構力強いな。これなら崖登れるんじゃない?



「やはり……あまりに変わりすぎてますね……本当に別人になったようです……ごほごほ」

「え? なんだって……」



 背中でぼそぼそ言っていたがよく聞こえなかった。どうせ、悪口だろう。背中でぼそっとでデレるドロシーさんだったら萌えるのに……



「いえ、なんでもありません。その……あなたはお優しいのですね。ありがとうございます」



 感謝の言葉を告げたドロシーはぎゅーーっと抱き着く力が強くなってくる。それはまるで甘えてくるようで……少しは心を開いてくれたのかなと思う。

 


「うふふ、よかったですね、ドロシー様」

「なにがですか……?」

「いつかこんな風に甘えることのできる相手がいたら嬉しいなっておっしゃっていたじゃないですか」

「ナルヴィ!!」



 女子二人が何か騒いでいるが気にせず崖を上る。ちらりと横を見ると、崖につぶされたナルヴィのおっぱいがつぶれてすごいことになっている。

 おい、崖!! その位置かわれ!!




「はー、結構長かったな……」

「ありがとうございます。その……重くはなかったですか?」

「ん? 大丈夫だって。むしろもっと肉(おっぱい)をつけたほうがいいぞ」

「そうですね……もしも、病気が治ったらたくさん食べます」

「うふふ、お二人はここで休んでいてください。薬草を採ってきますね」



 ナルヴィが俺たちのやりとりをほほえましそうに見ながら、泉の方へと歩いていく。ドロシーの息は少し荒い。魔法をやたらめったらぶっぱなすわけにはいかないし、少し休ませた方がいいだろう。



「一人で大丈夫でしょうか……? ここは強力な魔物がいると聞きますし……ごほごほ……」

「それならば大丈夫だ。あいつは寒いのが苦手でな、今は冬眠してるよ」



 そう、俺がここに急いで来た理由の一つがそれだ。中盤のボスかな? という強さを誇る魔物だが、ゲームでも寒い時は眠っているため攻撃したりなど余計なことをしなければおきることはない。ゲーム序盤にいたずら半分で、戦ったが瞬殺されたのは懐かしい。



「お兄さまは詳しいんですね。それに、おぶってくださってありがとうございます……」

「気にするな、俺はお前の兄だからな……」



 先ほどまでのつんつんはどこにいったやら、すっかりしおらしくなったドロシーの頭を何気なく撫でる。義理とはいえ妹だからか、恋愛対象外(ひんにゅう)だから、こんなことだってできてしまう。

 くっそ、ナルヴィにもこんな風にできれば異性として見てもらえたのだろうか? そうだ、ちょうどいいちょっとナルヴィとの恋路のサポートしてくれないか聞いてみよう。なんか好感度あがってるみたいだし、教えてくれそうじゃない?



「なあ、ドロシーちょっと誰にも言わないでほしい話があるんだけどいいか?」

「それはナルヴィには言えないことでしょうか?」



 声をかけるとドロシーは驚いたように目を見開いてから、少し緊張したようにこちらを見つめてくる。



「ああ、まだお前にしかいうつもりはないよ」

「なるほど……」



 そりゃあ、恋愛相談なんてあまりたくさんの人に言うものじゃないからな。ドロシーはここに来る前の無表情ではなく、真剣な瞳でわずかだけど嬉しそうにこちらを見つめて笑みを浮かべた。



「うふふ、やはりそうだったのですね……」

「え?」

「お義兄様の言いたいことはわかっていますよ。そして、ナルヴィではなく私に伝えようとしてくれたことを光栄に思います」

 


 うへぇーーー、ナルヴィをいいなって思っている俺の気持ちがばれていたってことか? そりゃあ、童貞だから好意とかははたから見ればバレバレだったのかもしれない。

 でもさ……まだフラグも立っていないのに、ナルヴィになんて言えるはずがないだろうが!!



「なら単刀直入に言うぞ。俺は……」

「きゃぁぁぁぁぁーーー!!



 泉の方から聞こえた悲鳴に俺とドロシーは目をあわせてから立ち上がる。



「ドロシー!! 俺が先に行くから無茶をするなよ!!」

「はい、私も必ずいきますから」



 そして、急いで駆け出した先で俺は驚きの景色を見る。



「くっそ、なんでお前とたたかわなきゃいけないんだよ……」



 それは薬草を手に震えているナルヴィをまるで今にも襲おうとしているミスリルの防具お身に着けた巨大な人型の魔物……トロルの亜種である『エロル』がいたのだから……



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主人公の好感度がせっかくあがってきたのに……どうなるのか?

そして、ドロシーが主人公の本心に気づくときはくるのか……



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