第7話 更生

 翌朝、村長宅に泊まった俺とティナは驚いた。


 あの厳つい連中がみんな坊主頭になり、村長宅を訪れたからだ。


「今まですみませんでしたー!!」

「「「すみませんでしたー!!!」」」

 一列に並んで一斉に坊主頭を下げる姿が高校球児に見えてしまった。


 そして紅一点マネージャー枠で頭を下げていた天使がいた。頭に輪っかはなかったが。

 でもあの金髪ロングには見覚えが‥‥‥。


「セ、セリス!?」


 驚いて思わず声が出てしまった。あの顔のイレズミはどうした?


「おぉ、エドガー。ここにお泊まりだったか。あの化粧はやめてみたんだけど、ど、どうかな? アタシ、変じゃないかな?」

 少し恥じらい気味のセリス。頬をほんのり染めて聞いてきた。

 あれってイレズミじゃなかったのか。


「いや、全然良いと思うよ。綺麗だよ」

「‥‥‥!! そ、そうか。良かった」

 一瞬驚いた後に安堵したような表情。

 もともとはものすごい美人だったんだな。


「エドガー様? セリスさんを見過ぎでは?」

「いや、そんなことはな‥‥‥」

 と言いつつも目が離せなかった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「エドガー、少し知恵を貸して欲しいのだが‥‥‥」

「ああ、なんだ?」

 セリスから改めて相談された。


「こいつらの働き先を探すのだがどういう所が良いのかと思ってな」


 なんだ、そんな事か。

「ふむ、それぞれみんなスキルを授かっただろう? それに近い仕事を選べば良いのでは?」


 スキルとは言ってみれば天職みたいなものだ。そのスキルを持っている者は上手く仕事が出来るだけでなくその仕事に染まりやすいらしい。働いているとこの仕事が楽しいと思えてくるそうだ。

 羨ましい話だな。‥‥‥いや、別に泣いてなんかいないぞ。


「そうか、なるほど。スキルか! 一人ずつ確認してくる」

 セリスは立ち上がり走って行った。

 

 数十分後、再度走って戻ってきた。

「エドガー、『絵師』ってスキルはどうしたらいい? 何か絵を描く仕事なんてあるのか?」


「絵師か。宮廷画家とかが一番なんだろうけどな。あとは‥‥‥似顔絵とかか?」

「似顔絵? 顔なんか描いてどうする?」


「何か事件が起きたとするだろう。犯人はどこかにいるけど見つからない。そこで犯人の特徴を捉えた絵が描けると手掛かりになる。その辺に「こんな顔の人見たら通報して」って顔の絵と一緒に貼って置いとけば‥‥‥あとは何かの図面とかかな」


「おお! なるほど!!」

 もっとももっと大きい都市じゃないと需要がないだろうけど。

 セリスはまた走って行った。


 そしてまた戻ってくる。

「『風呂』というスキルはどうしたらいい!? 風呂とはなんだ!?」

「風呂ってのはな‥‥‥」


 また随分と激レアなスキル持ちがいたものだな。そしてセリスは風呂自体を知らないらしい。

 仕方ないか、俺だってこっちの世界では見たことないからな。


『風呂』スキルは風呂の設計、沸かし、湯加減、温泉の掘り当てなど風呂関連全般スキルだ。

 そのスキル持ちが一人いるだけでそこは観光温泉地になる事も可能だ。


「ほほう、ありがとう!!」

 セリスはまた走って行った。


 そんなこんなで全員の働き先の目処がついた。

 絵師スキルの彼『ドロー』と風呂スキルの彼『バス』の二人以外は。


 この二人には雑用係としてとりあえずいろんな俺の頼み事をお願いする人になってもらった。


 ちなみにセリスのスキルは【剣王】だそうだ。剣術の腕が恐ろしく上がる以外にも筋力、体力を一時的に強化する『身体強化』が使えるスキルだな。

 軍人や冒険者にもってこいのスキルと言えるな。

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