第2話 暗室だった部屋
いぶき姉さんに手を引かれ、暗室だった部屋に入る
暗幕は設置してあるが、今は現像作業が行われておらず暗くはなっていないし、独特の酸っぱい匂いもほとんど飛んでいる。
「思ったより匂いも残ってないですね。」
「暗室としてはしばらく使われていないからね。今時、フィルムカメラを使う高校生なんて写真部でも稀だよ。何ならスマホだけでも写真部として活動できる時代だ。」
「そうなんですか、まあ、僕もデジタル一眼レフしか使っていませんし。」
「そうそう。それ以前に、我が写真部の部員は今や私しかいなくなってしまったしね。5人もいた3年生が卒業した今、残されたのは私だけ。」
「そうでしたね。だから、中学時代から僕を強引に勧誘してたんですよね(笑)。」
「強引とは人聞きが悪い!でも、そーゆーこと。だからキミには感謝しているよ。部の存続を助けてくれた。ありがとうだよ。」
「僕は、どっちにしろ写真は撮り続けるつもりでしたし。いぶき姉さんと一緒に写真を撮るのは楽しいから。」
「嬉しいこと言ってくれるね。ついでにここを、キミと私だけの秘密の花園にするってのは名案だろ?」
「秘密の花園・・・。」
その言葉を聞いて、多少落ち着きを取り戻いていた僕の中の何かが沸々と加熱を再開する。
いぶき姉さんはそれを察知したかのように、シュッと部室と暗室を隔てる扉の暗幕を閉める。
現像後の写真を並べるテーブルは、よく理科実験室にあるような大きな実験台なのだが、その上にはカーテンサイズの大きな暗幕がシーツ代わりに敷かれていた。
「さぁ、今日からはここでお姉さんがキミを慰めてあげる。」
「はい・・・。」
いぶき姉さんは、テーブルの上へ僕を導く。
「もう・・・、あの写真を見て、すっかり点火済みだね。」
「いや、点火って・・・」
「大丈夫、あの日だって私は本心でキミを受け入れているんだよ?むしろ、キミを慰めることができて嬉しいんだ。今更、引いたり逃げたりしないよ。」
いぶき姉さんは眼鏡をはずして制服のリボンを緩め、実験台に腰を掛け足を宙に浮かせている僕を優しく抱きしめた。
「少し時間たったくらいじゃ、全然鎮まらないね。」
抱き合ったことで臍のあたりに触れてしまったのだろう。
その感触を身に感じて、いたずらっぽくささやく。
「だって、僕はあの日からもうおかしくな・・・。」
「おかしくなんてないよ。ある意味キミは男性として正しいんだと思う。」
「あとは、私にまかせて。」
「うん。」
「いい子。」
僕のシャツのボタンを一つずつ外しながら、首筋に顔をうずめ吐息をかけてくる。
自分の体温が上がっていくのを感じながら、無意識にいぶき姉さんの身体へ手を伸ばしてしまう。
「んっ、」
と声と息の区別がつかない音がいぶき姉さんの口から洩れる音を聞き、優等生にしては少し短めのスカートの内側から、ゆっくりと上に向かって手を這わす。
そして、明らかに温度と湿度が違う場所に指先が触れたとき、僕の頭の中で小さな泡が一つ弾ける音が聞こえた。
優しく包み込むように抱擁していたいぶき姉さんは、いつの間にか僕にしがみ付き全身を密着させている。
「はあ、キミ、もう、そろそろ。」
「うん、姉さん、お願い。」
互いに意思の確認を済ませ、あとはいぶき姉さんに全てを任せる。
そこから先はよく覚えていない。
あの日以来、いぶき姉さんに慰めてもらうときはいつもそうだった。
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