シュルク・ヒルウェル駅について

雨戸龍平(あまど りゅうへい)

シュルク・ヒルウェル駅について①

フェラーデルフィア、ペンシルベニア州

 1930年12月2日

 ハワード・P・ラヴクラフト先生

 拝啓 ラヴクラフト先生、この手紙はあなたへの招待状です。あなたが幻のような神秘的な地域に深い興味を持っておられることは、大ファンとしてよく知っています。メイン州北東部のキャッスルロック地区にあるエルサレムという小さな町の裏手の森の奥に、シュルク・ヒルウェル駅という場所があります。行ってみないと想像できないでしょうが、北の原始林の中に草や苔や蔓で覆われた現代的な駅があるのです!

 その場所は暗くて怪しく、どこかに不調和な狂気と混沌が宿っていて、その巨大な黒い影の中に悪魔が棲んでいるかのように、訪れる者をことごとく飲み込んでいました。興味があれば、行ってみるのもいいかもしれません。でも、その前に、インディアン人のシャーマンを案内人にすることをお勧めします。私はシャーマンのところに行ったことがなかったので、いろいろと面倒なことになりました。

 プロヴィデンスのお宅を訪ねることはできませんが、今の私は狂気と混乱の中に逃げ込みつつあり、容貌は乾涸び、醜くなっています。あるはずのないその駅には、昔の面影や、私たちが触れることはできないが感じ取ることのできる神と呼ばれる怪物が埋葬され、陰鬱で華やかな薔薇がそこかしこに生い茂っていました。毎晩列車が通るんですが、そういう列車に乗って、触れられない人と接したことがあります。

 メイン州のエルサレムに来てください、ラヴクラフト先生!エルサレムという町に来てください!あの駅のことを後世に伝える必要があります。伝える人は、この世にも、先生だけです!

 あなたの

 ロジャー・バックマン

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