第10話 塩コショウ先輩、メンツユ先輩

以前勤めていた会社の先輩と、トンカツ屋に入った時の事である。


俺も先輩もロース・カツ定食を頼んだ。


トンカツが運ばれて来て、ソースをかけようとしたら

「お前、ちょっと待て」と先輩の声がかかった。


「どうしました?」と俺が聞くと


「お前、トンカツにソースをかけるつもりなのか?」と真剣な表情で聞いてきた。


「え~と…、それ以外に選択肢はないと思うんですが?」

何言い出すんだ、この人。早く食わせてくれ…。


「お前、馬鹿だなぁ。ソースなんてかけたら、トンカツの肉の味が判らないだろ!?」

と憤慨していた。


「じゃあ、何をかけるんですか?」


「塩コショウに決まってんだろ?」


へ…?トンカツに塩コショウ…?

因みに、テーブルの上には塩コショウは無い。


先輩はお店の方を呼んで「塩コショウ下さい」と頼んで、出して貰った。


「食べ比べてみろ」と先輩は有無を言わさず、俺のトンカツの半分に塩コショウをかけた。


マジかよ…、

ソースかけないトンカツなんて、ありえねぇよ…。


食べてみて、うむ…確かに肉の味がわかる様な気がする…けど、何か物足りない…。少なくとも俺にとっては、オカズとしての機能は低下する。


「な?美味いだろ!?」

と満面の笑みで言う先輩に


「そっすね…けど、俺はソースの方が断然いいです」と伝えたらガッカリしていた。


この先輩、コロッケにも塩コショウなのだ。


俺も、この先輩に出会ってからは、コロッケはソースではなく、塩コショウになってしまった。


マヨラーの友達は、「コロッケにはマヨネーズだろ!!」って、怒ってたけど…。


また、別な先輩は、何にでもメンツユをかけないと気が済まないと言う方がいた。

玉子焼にも、ハンバーグにも、焼売にも、餃子にも、メンツユ…。


まあ、メンツユは万能調味料ではある。


白菜やキャベツをツナ缶で炒めて、メンツユで味付けすると、結構美味いのだ。



トンカツには、やはりソース。

けど、スーパーで売ってる田楽味噌をかけても美味いです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る