六話 普通を装う女子高生 其の陸
*2*
その一言で世界は
ガチリと言う音と共に突然に視界に色が消え、世界が凍った様に止まると
そこに二人の幼い少女が踊りながらコソコソと話しており、その真ん中に黒髪の男が座っている。
万華鏡の中で見た男に似ている様に感じるも記憶にノイズがかかるとその境目がよく分からなくなり、その彼が
「おまえ、ゲームに参加するんだな? 」
「えーと、ここは何処? 」
自分の質問がよりによって質問で返ってくると彼は少し不機嫌そうになるも、悲しそうな表情をして溜息を吐きながらそれに応える。
「質問を質問で返すとはな。ふん、誰かさんにそっくりだ。いい、教えてやろう。ここは狭間。現実世界とミラーワールドを繋げる時間軸に無い場所。説明は終わりだ。参加するのか? しないのか? 」
「え、それだけ? 待って待って分かんない。ミラーワールドが何なのか分からないし、ゲームがなんだか分からない。あいつがプレイヤーやら、なんなら言うからゲームって言っちゃったけど合ってたの? 概要は? ルールは? 」
一答えたら百質問が返って来た。
それに男は更に溜息を吐くも怒りを向ける事も、面倒臭がる事もなく、ただ、淡々と感情が死んだ様にそれを説明する。
「ミラーワールドは幾星霜とある並行世界の特異点だ。それ故に、ここでは全ての並行世界に於ける様々な事象を決める事が出来る。今行われているゲームはその事象を自由自在に操る権利を、決定権を得る為の物。名をディヴィジョン。プレイヤー12人による殺し合いだ」
「報酬は置いといてとりあえず殺し合いをしてるんだね。了解、なら早く始めよう。有紗(アリサ)が心配だし」
「そんな、軽い気持ちで始めるのか? お前が
ソワソワしながら
「友達を助ける為に損得勘定で動くなんて女子高生らしく無いもん」
その事を聞き、男は何故か悲しそうに微笑むと
「俺は現管理者であり、前回のゲームの勝者であるユグドラ。お前は本来ならイレギュラーであり、あり得てはいけない13人目。乾がお前を殺そうとしたのもよく分かる。だが、俺はお前があいつに啖呵を切るところを見て少しだけお前の戦いを見たくなった。その契約書に手を置け。契約しろ。そうしたらお前の戦いは始まる」
「戦え、
その一言を聞くと共に視界は再び色づき始め、世界は動き出す。
*3*
「おまえ、おれに啖呵を切ったなあ? 良いだろ、殺してやる、グチャグチャに原型を留めないくらいに」
獣は少し落ち着いたのか中の女の声が混ざり合いながら喋っていると唐突に彼らの目の前に先程狭間であったユグドラが現れた。
「なっ、管理者。どおしてここに? 」
あまりに突然の出来事に獣は戸惑うとそれ見て薄らと笑みを零し、ユグドラは口を開く。
「プレイヤーの参加を宣言しに来た。
その一言を残し、ユグドラは再び姿を消した。
そして、
「なぁ、
(とりあえず、どうやってこの状況を打開する? 逃げる? でも、あんなの背中向けたら殺されるのが確実だし。考えても無駄そうだし、うん、なら、走ろう。さっきのは前言撤回。走れ)
思い切った瞬間に彼の体は動き出す。
だが、それは背を向け逃げるのではなく、獣の方へと走り出していた。
予想外の走りに獣は虚を突かれ、驚くもすぐに鋭く尖った槍の先端を向かいくる彼に容赦無く放つ。
しかし、
それは一般の人間では捉えられない程の速度の突きであり、瞬間的にはマッハに及ぶものである。それを
獣は動揺する。
何も持たない者が自分の技を避けた事に。
そして、獣は怒る。
何も持たない者に自分の技を避けられた事に。
だが、
彼が向かった先は一つ。
それは
何も知らない状態であれとやるのは危険と感じ、
しかし、そこには
「
先程とは全く違う形の槍となりそれは背を向けた
「
獣が放った槍は校舎の壁を貫き、穴を開ける。
だが、彼女は気づいていた。
彼らにその槍が当たっていないことに。
獣はそこにいない事を理解するとドアを槍で突き破り、彼らを見つける為に廊下を駆け回り始めた。
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