第8話 初コラボ配信してみた
(一人称視点)
「――あ〜、テステス。……うん、どこも壊れてないな。やっぱ配信用のドローンって頑丈だなぁ」
:ん?
:きた
:始まった!!
:待ってました!
:キター!!!
「お、今日は早くもコメントが。――え〜コホン。皆さんこんにちは。『止まり木亭』店主の
「――こんにちは! 配信探索者のホムラアカリです! 今日は逆川さんのチャンネルにお邪魔しています!」
:待ってました!
:きちゃ〜
:キタキタ
:ホムラちゃん可愛い
:ホムラちゃんねるから来ました
:ホムラちゃんを助けてくれてありがとう!!!!
:またホムラちゃんの素敵な笑顔を見られるなんて、夢みたいだ
:あの時はほんともうダメだと思ったからな……未だに夢に見るわ
「えー、本日は事前に告知していた通り、ホムラアカリさんとご縁がありまして。コラボ配信を行わせていただく運びとなりました」
「はい! 今日は逆川さんのお店にお邪魔して、実際にお食事を頂きたいと思います。いわゆる食レポですね!」
:ホムラちゃんに食レポしてもらえるとか羨ましい
:探索者の中でもトップクラスの人気だからね。集客効果凄いでしょ
:やっぱ助けてもらったお礼とかなのかな?
:まあ二人の間に何かあったと考えるべきよな
:でもSMSには「ちゃんとお礼を伝えられました!」って書いてたぞ。別件じゃね?
:ユニコーン激怒
:いや逆に考えろ、これで不味かったら大惨事だぞ
:そもそもあの料理動画本物なの? 正直まだコラだと疑ってる
「実は今回のコラボ、私の方から申し出たんです! ダンジョンの中にお店を開いた方というのは、今まで聞いたこともなかったので……魔物の食材を使った料理が楽しめるという事で、すごく興味が湧いたんです!」
そう、今回ホムラさんからの提案で、俺の配信枠を使ってコラボ配信を行う事になったのだ。理由は言わずもかな、お店の宣伝。
……うん、確かに困ってた。お店開いたのに一人も客が来ないから、どうしようかと悩んではいた。
そこでホムラさんを『止まり木亭』のお客さん第一号にしつつ、その話題性で更なる集客を狙うという話になった。
流石にトップクラスの配信者ともなると考えることが違う。多分俺一人じゃそんな事思いつきもしなかった。このあたりの嗅覚は流石と言うべきか。
俺も配信者としてはまだまだ新参。この機会にたっぷり勉強させてもらおう。
「いやー、動画を配信したり色々な意味で話題にはなったりしたんですが、未だにお客さん来なかったんですよ。なのでホムラさんが記念すべきお客さん第一号って事になりますね」
「それは光栄ですね! あと私に
「ん?」
:ホムラちゃんがお客さん第一号かー
:あんだけバズってたのに誰も客来なかったのかよ
:正直興味はあったけどあの場所はちょっと……本物だったらの話だけど
:ホムラちゃんに料理作ってあげるとか一度でいいからやってみたい
:ホムラちゃん料理系コラボって初めてだよね? 普段探索動画ばっかりだし大丈夫かな
:ホムラちゃんにお腹いっぱい食べさせたい
:ホムラちゃんの食事シーンは貴重だぞ、録画班待機してる?
:ホムラちゃんかわいい
「……ホムラちゃん?」
「あはは! じゃあ私はトオルさんって呼んでいいですか?」
「ぜんぜんオッケーです」
さて、コメント欄を見てみるとかつてない勢いで文字が流れている。コメント読み上げ機能も全然追いついてないな。
同時視聴者数も凄い。開始数分で既に五万人を突破している。
俺が救助する例の動画が出回った影響もあるだろうが、やっぱりホムラちゃんの影響がデカいなー。
仮定の話だが、俺がホムラちゃん以外の探索者を助けたとしても、多分ここまでバズらなかっただろう。その上コラボまでしてくれるなんて、本当に有難い話だ。
……しかし。
:正直この男は信用できん。ダンジョンの中に店とか魔物の瞬殺とか、話盛りすぎ。明らかに嘘でしょ
:生配信でどうやって嘘つくんだよ。配信中にミノタウロスを瞬殺した動画はもう世界中に出回ってるぞ
:幾らでもやりようはあるだろ? 最近はリアルタイムでAIが動画編集してくれるドローンも出たし、少なくとも下層の特異個体を瞬殺よりかは信用できるわ
:それは確かにw下層の魔物舐めたらいかんぞ
:現に某大物Dチューバーがそれでヤラセ動画撮ってたの、発覚したばっかだしなぁ……過敏になるのも仕方ねー
:仮に実力が本物だったとしても、今まで無名だったのが怪しすぎるわ
:本物かどうかを証明するための配信なんでしょ
:これホムラちゃんを詐欺の片棒に担がせてるんじゃね?
:逆にホムラアカリが糸引いてる可能性もあるぞ。逆川透は今世界中から注目されてるし、それを利用すれば莫大な利益を得られるからな
:うわーありそう。配信者業界ってやっぱ怖いわ
:店長さんが被害者ってこともあるのか
……大量のコメントの中に、チラチラと気になる反応が見える。
大多数の
俺の動画をフェイクだと疑う意見が多いが、中にはホムラちゃんへの誹謗中傷にまで発展しているものまである。
俺のことは何を言ってくれても結構だが、彼女にまでそういった悪意をぶつけてくるのは気に入らない。
というか、俺のせいか。俺が疑われているから一緒にホムラちゃんも疑われてるのか?
つまり俺の詐欺師疑惑を晴らせばいい訳か。……ふむ。
「ホムラちゃん。ちょっと予定変更しようか」
「はい?」
「今から下層攻略しよう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます