第2話:まるでカモシカだな。

「錨さん・・・GPSとヘリの情報だと脱走犯このあたりまだ走って逃げてる

ようですね 」


「ああ・・・車を乗り換えてないってことは捕まるのも時間の問題か?」

「俺たちまで出張る必要ねえんだよ、ったく」


「どうせすぐ捕まりますよ・・・のんびりいきません?錨さん」


「そうだな、俺たちが目くじら立てて追う相手でもないしな・・・」


「せんぱ〜い・・・ヨッシー」


いきなりヨッシーと呼ばれた御手洗は車の窓の外を見て驚いた。


「なんだ・・おまえ?・・・」


サイクルウェアにさっそうと身を包み自分の愛車プリンスに乗って車の横を

伴走する心音がいた。


錨と御手洗の車を追いかけてきたらしい。


御手洗は車の窓をあけて怒鳴った。


「おまえなにやってんだよ〜」


「及ばずながら、私も脱走犯追いま〜す」


「バカかおまえ・・・自転車なんかで犯人追えるかよ」

「いいから、怪我する前に湾岸署に戻れ!!・・・」


「大丈夫です、任せてください」

「じゃ〜錨さん、ヨッシーお先に〜」


そう言うと心音はふたりが乗った車を軽々と追い抜いていった。


「い、錨さん・・・あれ」


「おおおおお〜〜〜〜なんだ〜〜〜〜?御手洗、あれ心音か?」


「つうか、めっちゃ速いし、めっちゃカッコいいし・・・超足長いし・・・」

「まるでカモシカだな・・・あいつ自転車に跨ると足が伸びるのか?」


「御手洗、早いなあいつ・・・何キロ出てんだ、あの自転車?・・・ もう

あんな遠くに行ったぞ」


「うそだろ・・・車より早いって・・・まじで?」

「そうだよ、あいつ大学時代トライアスロンの選手だったんすよ」


「いや〜それにしたって・・・あいつがすごいのか?それとも自転車が

すごいのか?」


「両方じゃないっすか?」

「自転車だけじゃ走りませんからね、錨さん」


「まあな、じゃ〜あいつの足が尋常じゃねえのか?」


錨とヨッシーがそんなことを言ってる間にプリンスに乗った心音はふたり

の視界から見えなくなっていた。


「見えなくなったぞ、あいつ」


「あ〜・・・このポンコツじゃ追いつけんわ」


で結局、心音は脱走犯の車に追いついてプリンスごと車の前にたちはだかって、

車を止めてみごと脱走犯を逮捕してしまった。


「バカモンが・・・いち婦警が余計なことするんじゃないよ」


って心音は上司から大目玉を食らった。


「でもまあ、・・・今回は長引くことなくすみやかに犯人逮捕と言うことで

始末書一枚でチャラだな・・・よくやった花園」


ドヤされたけど褒めてももらえた。


そして今日も心音は捜査一課でハエみたいにうろちょろして、錨さんから

ウザがられていた。


「花園・・・なにまた捜査一課でうろちょろしてんだよ」


「すいません、部屋を間違えたみたいです」


「よく部屋を間違えるよな、おまえ」

「事件なんかねえんだから、真面目に自分の職務を全うしろ」

「ハエみたいに、ここでうろちょろするんじゃねえわ・・・」

「ハエたたきで、しばくぞ」


つづく。

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