過労死した社畜OL、ゲーム内のエルフに転生して無限の寿命とチートクラフトを手に入れたので今度こそ自由に生きたい!~趣味にものつくりに、のんびり森で【もふもふ】と【スローライフ】な日常を希望します~

月ノみんと@成長革命2巻発売

第1話 気づいたら森で草


 百瀬ももせさくら28歳。

 社畜OLとして日々を暮らす私は、とうとう過労死寸前まで追い込まれていた。

 エナジードリンク15本飲んでギンギンに冴えた頭のまま、早朝6時に帰宅する。

 スーツのまま泥のように眠って、次に目が覚めたのは夜の8時。

 しまった! 貴重な休日を無駄にした。

 朝になったらまた出勤しないといけないのにぃ。


 私は飛び起きて買っておいた新作ゲームを起動する。

 独身で彼氏――どころか男友達すらいたことのない私にとって、ゲームだけが唯一のオアシスだった。

 昔は絵を描いたりいろいろ趣味があったけど、仕事で忙しくてやめてしまった。


 本当は体のためにも休みくらいはゆっくりしたほうがいいのだろうけど、これだけは譲れない。

 ゲームのない人生なんて、生きてる意味がないもんね。

 三度の飯よりゲーム好きな私は、貴重な睡眠時間を削ってまで、ゲームを優先させていた。

 そんなだからお肌もボロボロだ。

 眠気覚ましに追加でエナジードリンクをグビィッと流し込んで、私は一人でテンション上がって叫んだ。


「過労死寸前でもゲームだけはやめられないぜ☆」


 PCの画面には『ドラゴンクラフトオンライン』と、ゲームのタイトルが表示されている。

 先週発売されて気になっていたやつを、ようやくプレイできる。

 オンライン同時接続のオープンワールドRPGらしい。

 サバイバルとクラフト要素が売りで、素材を集めてなんでも作ることができる、自由度の高いゲームだ。

 シナリオも固定のものはなく、AI制御により無限に分岐するフリーシナリオゲームらしい。

 最近のゲームってほんとすごい。


「はぁ……この数時間のために私は仕事をやれてるよぉ……無限に時間があればいいのになぁ……。ほんとなら一生ゲームしてたいよー」


 とりあえずニューゲームをクリックして――って、あれ……。

 なんかすっごい眠たくなってきた。

 さすがに睡眠時間足りてなさすぎたかー……。

 って、これなんかかなりヤバそう……。

 ただの寝不足じゃないよね。


 頭が割れるように痛い。

 口の中は血の味がする。

 なんかヤバい神経とか切れたのかも。


 これ、死ぬときのやつ?

 私このまま死ぬんかなぁ?

 あーくそ、最後にゲーム思い切りやりたかったなぁ……。

 混濁する意識の中で、私は最後までゲームのことばかりを考えていた。

 

 

 ◆


 

 気が付くと、森の中に立っていた。

 たくさんの木々がうっそうと茂るうす暗い森だったが、かすかに差し込む木漏れ日が泉に反射して、神秘的な雰囲気を醸し出している。


「え……? 嘘……ここ……どこ……?」

 

 さっきまで自室でゲームをしていたはずなのに、いったいなにが起こったのだろうか。

 ふと足元の泉を見ると、そこには驚くほど顔の整った少女の姿があった。

 透き通るような碧眼に、艶やかなロングの金髪、胸は小さいがモデルのような8頭身体形、そして特徴的なのは三角形にとんがった耳である……って、なにこの耳……!? 

 

 この特徴的な耳の形は、おそらくエルフだと思う……。っていうか、エルフ……? エルフって実際にいるの……!?

 というかこの美少女はいったい誰……?

 泉の中のエルフ美少女が驚いた顔をしたので、そこでようやくそれが自分自身だということに気づく。

 なんで私、エルフになってるの……!?

 

「あーまじか……これって、あれじゃん……これ、異世界転生じゃん……!」


 漫画とかで読んだことあるやつだ。

 てかまさか自分がそうなるなんて思いもしなかったな……。


 でもとりあえず、これって……最高なのでは……!?


「よっしゃあ! 明日から仕事いかなくていいじゃん!」


 まず、それがなによりうれしかった。

 そんなの最高じゃん。


 しかもエルフと言えば歳をとらないし長生きするし、いっぱい時間を使える!

 今まで断念してきた趣味に時間を使うことができる!

 

「よし、せっかく異世界に転生できたんだから、今度は社畜人生なんか絶対ごめんだ。私は自由に生きるんだ!」

 

 この人生では、前の人生でできなかったことをしよう。

 くだらない人間関係や、奴隷のような労働とはおさらばだ。

 何にも縛られずに、のんびり暮らしたい。

 よし決めた。

 この世界での目標は、自由にのんびりをモットーに!


 じゃあ、まずは生活基盤を整えないとなー。

 森の中でどうやって暮らそう?

 街に行くのもいいけど、エルフだしなぁ。

 魔法とか使えたりするのかなぁ。

 

 私が今後のことについて思いを馳せていると――私の前をぴょんこぴょんこと小さなスライムが横切っていった。

 どうやらこちらに敵意はなさそうだ。


「きゅいー」

 

 可愛い。

 ん? てか、あのスライムに見覚えがあるな……。


「あ、思い出した!」

 

 あのスライムは『ドラゴンクラフトオンライン』のパッケージに描かれていたものと同じだ。

 てことは……もしかしてこの異世界って、あのゲームの中なの!?

 まじか……。


 でも、これが本当にあのゲームの中に入っちゃっただけなのか、それともゲームによく似た異世界に来てしまったのかはわからない。

 他のプレイヤーとかっていたりするのかな。

 よくわからない。

 まあ、どうでもいいか。


「ゲームの世界ってことは、メニュー画面とか使えたりするのかな? 収納インベントリっていうんだっけ?」


 私が収納インベントリと言った瞬間だ――。


「わ……!」


 私の目の前に、ゲームのインベントリのような画面が開いた。

 インベントリっていうのは、アイテムボックスのようなものだ。

 四角い空白がたくさん並んでいて、そこにアイテムを収納できるようになっている。

 そのほかにも、メニュー画面が私の目の前に浮いている。


「おー、ゲームと一緒だ!」


 じゃあ、クラフトとかもできるよね?

 このゲームは新作だから初めてやるけど、似たようなサバイバルクラフトのゲームはいくつもやったことがある。

 だから説明がなくても、勝手はわかる。

 おおむね、某四角い世界をクラフトしていくゲームと同じ要領だ。


「まずクラフトの素材になりそうなアイテムを集めよう」


 私はその辺に落ちている石や枝を拾い集めた。

 拾った石や枝はインベントリに収納していく。


 あっという間に、石10個と枝15個が集まった。


「じゃあ、クラフトメニューを開いてみよう」


 クラフトは、作りたいアイテムを選んで、レシピから必要な素材を用意するシステムのようだ。

 最初だからか、作れるアイテムの種類はまだ少ない。

 その中から、私がまず作ろうと思ったのはこれだ。


「えーっと、石の斧だね」


 木は今後たくさん集める必要が出てくるだろう。

 だからまずは、木を切るための斧を作る。



 ◆石の斧×1 

 

 必要素材 

 ・小石×10

 ・木の棒×1

 


「よし……!」


 私は素材をクラフトメニューに設置して、クラフトボタンを押した。

 すると、あっというまに、私の目の前に石の斧が出来上がった。


「おお……! すごい……!」

 

 さっそく私は石の斧をもって、木を切ってみることにする。


「えい……! えい……!」


 すると、10回ほど斧を振ったところで――。

 

 ――ポン!


 と軽快な音と共に、木が地面に倒れた。


「おお……! 簡単!」


 倒れた木に触れると、木はいくつかのブロック状になり、私のインベントリに吸い込まれていった。

 この調子なら、私でもなんとか木を集めれそうだ。


「よーし! もっと木材を集めるぞ! 夜までに家を作らなきゃ。伐採じゃああああ!」


 私はどんどん木を切り倒していった。


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