ユィートネルムの唄を聴いて

千賀まさきち

はじまりの唄

はじまりの唄

はるか昔

生者と死者、人と神々が共に暮らしていた頃のこと

世界を巻きこむ それは大きな戦があった


九日九晩続いたこの戦は

紅鷹と呼ばれたひとりの英雄が

銀糸のナァトに導かれ

神々の剣で世界を割ることで 終結をみた


しかし戦の犠牲は果てしなく

世界は混乱と混沌を極めた


独り生き残った 女神ユィートネルムは

自らの無力と孤独を憂い

九日九晩 泣き続けたという


そのときこぼれた涙は十八

その雫は世界に飛び散り

意思と意志をもって《聖霊・ラゥ》となった


そしてとうとう泣き疲れた女神は

自らの胸を剣で突き

その命を落としたのである


そのとき流れた女神の血は

傷ついた世界に流れ 固まり

新たな世界を創りわけた


ラゥの中でも力ある三者が

それぞれの世界を治めることとなった


すなわち、光を司るリィロンが治める生者の世界

すなわち、闇を司るゼランが治める死者の世界

すなわち、刻を司るナハトが治める狭間の世界


そしてラゥたちは自らの力が世界に害なすことを恐れ

己が認めたモノの身にその力を隠すことで

世界を見つめてゆくことにしたのである


ラゥを宿した存在は

朽ちぬ器と絶大なる力を手に入れた

すなわち《ラゥの司》と呼ばれるモノである

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