第12話 魯英

「ごめんなさいね、

 こんな物しか準備出来なくて」


「いっいえ」


そう言いながら劉良は、

目の前の出された果物を食べる。


「…ん?緊張してる?」


「いっいえそんな事は…」


そう言いながら劉良の心の中は、

震えていた。


「隠さなくていいのよ

 急に連れてこられたんでしょ?

 不安になっても仕方ないわよ」


いやそれよりも

あのガタイのいい張純様を

吹っ飛ばす女性を前にして緊張していた。


「ありがとうございます。」


「いいのよあのバカ亭主が

 迷惑をかけたのだから

 だから安心してここが実家だと思って

 ゆっくりしてちょうだいね」


そう言って、張純の妻である魯英が

ふふふと笑う。


「しかしこんな服まで貸していただいて」


劉良は、張純に突然つれてこられた

その為、身支度をする暇もなく

簡単な着替えしか持ってこれなかった。


そこで、服を借りたのだが

その服が洗練されとても高価で新品の物で

大切に保管されていたことがわかった。


「いいのよもう私達には必要ないから…

 あげるから良ければ持って帰りなさいな」


「そんな」


劉良は、遠慮するが

いいからと最終的に押し切られてしまった。


(仕方ない後日お礼の品を送ろう…)


劉良がそう思っていると

張純がなかなかこの部屋に

こない事にふと気づく。


「あのそう言えば張純様は、どこに?」


「ああ、旦那様は刺史様に

 挨拶に行ったわよ

 ちなみに貴方は、明日の予定よ

 だから今日は、ゆっくり体を休めなさい」


「そうなんですね、わかりました」


これについては正直助かった

人の前だから普通にしているが

馬に乗って急いでこの薊県に来た為

本当は、身体全身の筋肉が痛く

今すぐにでも寝たい。


「劉良様」


護衛として一緒について来た

冬項が部屋に入って来て頭を下げる。


「冬項、荷解きは終わったの?」


「はい、急な事でしたので

 元々持って来た荷物も少ないので」


「そうかありがとう、

 今日は、これで下がって体を休めて」


「私は、貴方様の護衛ですので

 そう言う訳には…」


「冬項とやら、ここでの若君の安全は、

 私が保証しますので安心しなさい」


「はっしかし…分かりました

 どうぞよろしくお願いします」


この屋敷の女主人にそう言われたら

断る事もできず

冬項は、チラリと劉良が頷いているのを

見た後頭を下げて部屋を出て行った。


「奥方様、部下のご無礼をお許しください」


劉良は、魯英に頭を下げる

冬項の言葉は、別の見方をすると

この屋敷の警備体制を信用していないと

言ってる物だからだ。


「ふふ大丈夫よ、ちゃんと心構えが出来た

 いい護衛じゃない腕も立ちそうだし

 大事にしなさい」

 

「はいありがとうございます」


劉良がそう言うと魯英がニコリと笑った。






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